人気漫画「進撃の巨人」が11年間の連載を終えついに完結を迎えました。
今回は進撃の巨人最終回をより深く理解することができるよう、物語上重要なシーンをピックアップして順番に解説していきたいと思います。
伏線回収はどうなった?最終話の内容について解説
以下について順番に見ていきましょう。
- 「ベルトルトは死ぬべきじゃなかった」のはなぜ?
- ミカサの頭痛の原因はユミルに頭の中を覗かれていたから
- グリシャ「お前は自由だ」の意味は?
- エレンは鳥に転生
- ミカサはジャンと結婚
- その後の世界ではパラディ島が報復攻撃を受けて滅びる
- 最終ページの意味は?
「ベルトルトは死ぬべきじゃなかった」のはなぜ?
アルミンとの会話の中でエレンは「シガンシナ区陥落の際にベルトルトは死ぬべきじゃなかったから、ダイナ巨人を操って母カルラを殺害した」と話していました。
母カルラを殺したのはエレン自身だったという衝撃的な事実ですがその理由は3つあります。
- 過去の自分に外の世界への復讐心を抱かせて地ならしの原動力にする
- 超大型巨人の力をパラディ島で運用する
- アルミン達を世界を救った英雄にする
詳細については別記事に記載していますのでご覧下さい。
進撃の巨人最終回で、エレンはシガンシナ区陥落の際「ベルトルトは死ぬべきじゃなかった」と話していました。 エレンにとってベルトルトは母カルラの仇ですが、なぜ死ぬべきではなかったのでしょうか。 今回はベルトルトの正体や死亡シーンにつ[…]
ミカサの頭痛の原因について伏線回収
連載当初から様々な考察がなされてきたミカサの頭痛の原因についてですが、これは始祖ユミルがミカサの頭の中を覗いていたことが原因だと判明しました。
ではユミルがミカサの頭の中を覗いていたのはなぜでしょうか?
ユミルはフリッツ王に愛されたいがために虐殺に手を貸してきた
ユミルが死後も「道」に留まり巨人を作り続けたのはフリッツに愛されたいがためでした。
奴隷としてフリッツに仕えるうちに彼に好意を抱くようになっていったユミルは、命令に従い続ければいつか愛される日が来ると信じ虐殺に手を貸してきたのです。
しかしユミルは自分が生み出した巨人が人々を苦しめていることに激しい罪悪感を抱いており、フリッツへの愛を断ち切らなければと考えていました。
ユミルとミカサの関係性と共通点
そんなユミルを2000年の愛の呪縛から解放する存在がユミルとよく似た境遇のミカサだったのです。
ユミルがミカサに自分を重ねたのは、
- ミカサがエレンに仕える奴隷的な立場であること
- その一方で宿主であるエレンを愛していること
- 本来は争いを好まない優しい性格であること
の3つが自分とよく似ていたためでした。
このようなミカサの境遇を自分と重ねたユミルは、地ならしで世界を滅ぼそうとするエレンをミカサに殺させることでフリッツ王の暴走を止められなかった未練を解消しようと考えます。
つまりユミルがミカサの頭の中を覗いていたのはミカサとエレンの関係性とミカサのエレンへの愛情を観察して、エレンを殺そうとするミカサに自分の気持ちを投影するためだったのです。
こちらも詳細については別記事に記載していますのでご覧下さい。
進撃の巨人連載当初からミカサを悩ませ続けてきた原因不明の頭痛。 頭痛の原因については様々な考察がなされてきましたが、最終回でついにその謎が明かされました。 今回はミカサの頭痛の原因と戦いが終わった後の生涯について紹介していきたい[…]
ユミルが成仏して巨人が消滅したが光るムカデ(ハルキゲニア)は最後どうなった?
ミカサがエレンを殺す結末を見て満足したユミルはようやく成仏することができ、巨人の力の源であった「道」も消滅します。
これにより世界から巨人が消滅することになったのですが、エレンに寄生していた光るムカデ(ハルキゲニア)は後述するとおりエレンの生首に留まったままでした。
グリシャの「お前は自由だ」発言の意味
エレンはアルミン達に地ならしを止められなかったとしても、世界の全てを滅ぼすつもりだったと話していました。
エレンのサイコパス的な人格が明らかになった衝撃的な告白ですが、エレンがこのように異常なまでの破壊衝動を抱くようになったのはなぜなのでしょうか。
その理由についてエレン自身は「わかんねぇ」と答えていましたが、以下の根拠から父グリシャの影響によるものだったと推察できます。
- 親の影響ではなくエレン自身の意志だったということにしたいのであればグリシャの「お前は自由だ」発言を入れる必要が無いこと
- 「お前は自由だ」は作中、「全然自由になっていない」という意味で用いられてきたこと
- ライナーが始祖奪還計画を続行すると決めたシーンとの対比
エレンは父グリシャから「お前は自由だ」と言われた記憶を思い浮かべていた
世界を滅ぼそうと考えた理由についてエレン本人には自覚がなかったようですが、生後間もなく父グリシャと対面した際「お前は自由だ」と言われた記憶をぼんやりと思い浮かべていたシーンがヒントになりそうです。
このシーンは小さいコマで描かれていましたが、最終回の1シーンとして作者が事前に告知していたものであることから物語上かなり重要な意味を持つものだと言えるでしょう。
「お前は自由だ」に関する伏線
実は「お前は自由だ」発言は作中で何度か登場しており代表例は以下の2つです。
- グロス曹長が復権派のグライスを壁から突き落としたとき
- フリッツ王がユミルに自由を言い渡したとき
身体拘束や奴隷から解放されるという点で形だけは「自由」なのですが、解放すれば死んでしまうのですから2人とも全く自由になっていませんよね。
これらは明らかに最終話の「お前は自由だ」発言の伏線として描かれたものであり、グリシャの「お前は自由だ」発言も「全然自由になっていない」という意味を持つことが推察できます。
ライナーが始祖奪還計画を続行したシーンも伏線になっていた
では「全然自由になっていない」とはエレンの場合具体的にどのような意味を持つのでしょうか。
これについて実はもう1つ伏線が張られており、それはライナーがアニとベルトルトを脅して始祖奪還計画を続行した場面です。
ライナーは計画を中止して帰ろうとする2人を引き止めた際に母カリナの顔をぼんやりと思い浮かべていますが、画像から分かる通りぼかしの入れ方など「お前は自由だ」のシーンと酷似していますね。
いずれも2人が人類殺りくを決断した動機に関する重要なシーンですが、「わかんねぇ」「わからない」などの発言から2人とも自分自身がなぜそうしたいと思ったのかは自覚がなく、親に鼓舞された際の記憶をぼんやりと思い浮かべているのです。
2人を対比させて描いた意図
このような対比的な描き方をした意図は、ライナーがそうであったように「エレン本人は自分の意志で虐殺を行ったと思い込んでいるが実は無意識に親の影響を受けていた」ことを伝えたかったからだと考えられます。
人から何を言われても自分を曲げずに「自由」を追い求めてきたエレンですがそれはエレンの自由意志ではなく、信じがたいことにエレンは誰よりも不自由な存在だったのですね。
またこのシーンからは、連載を通して描かれてきた「何が自由か」というテーマについて「親という大きな存在を乗り越えて自分自身の意志で考えて行動すること」という作者のメッセージが伝わってくるようにも思えます。
エレンが鳥に転生する伏線回収
ミカサに首を切られて死亡したエレンは鳥に生まれ変わりました。
ミカサのほどけたマフラーを巻き直していたことや、ミカサが鳥を「エレン」と呼んでいたこと、エレンが鳥に転生する伏線が張られていたことがその理由です。
エレンが鳥に転生する伏線の詳細については別記事をご参照下さい。
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ミカサはその後ジャンと結婚するがエレンを生涯想い続けた
天と地の戦い終結から時を経てミカサはジャンと結婚して幸せな家庭を築きました。
訓練兵時代からミカサを一途に思ってきたジャンですが、その思いがようやく実ったのですね。
ただ結婚後もミカサがエレンを愛する気持ちは変わることはなく、エレンの命日には毎年欠かさずお墓にバラ(花言葉は「愛」)をお供えに行く姿が描かれており、一方ジャンもエレンを思い続けるミカサに文句一つ言わず生涯寄り添い続けました。
その後の世界ではパラディ島が報復攻撃を受けて滅びる
終戦後の世界には平和が訪れますがそれも束の間で、約100年後世界は再び戦争を開始しパラディ島も大規模な空襲を受けて滅びてしまいました。
戦争の経緯は不明ですが、途方もない犠牲のもと1800年の争いの歴史に終止符が打たれたにもかかわらずたった100年で同じことを繰り返してしまうのは愚かであり悲しいことです。
これは現実世界にも通じることですが、今の私たちの平和は誰かの犠牲の上に成り立っているものでですよね。
幸運にも今の平和な時代を生きている私たちには過ちの歴史を忘れずに語り継いでいく責任があるように思います。
エレンが埋葬された丘の木は巨大樹に成長し謎の少年が訪れる
パラディ島が滅んで数百年後、エレンが埋葬された丘の木は高さ100mはあろうかという巨大な木に成長しました。
最終ページは巨大樹と化した謎の少年が訪れた描写で締めくくられる
最終ページは巨大樹と化した丘の木に謎の少年が訪れた描写で締めくくられましたが、このシーンはどのような意味を持つのでしょうか。
このシーンは以下の画像から分かるとおり、始祖ユミルが巨人の力を手にした場面と重なることから巨人復活のフラグと言えます。
ユミルが巨大樹を訪れ巨人の力を手にしたシーンとの対比
画像から分かるとおり木の根元に人が通れるほどの空洞があるところや、空に向かってそびえ立っていることを強調した描き方、周辺の木の様相などが酷似していますよね。
これらの類似点から最終ページは少年が始祖の力を宿し巨人が復活する暗示と言えます。
ハルキゲニア(光るムカデ)の正体は「全ての有機生物の根源」であり消えていなかった
実はエレンに寄生していたハルキゲニア(光るムカデ)はエレンの死亡後もエレンの生首に留まったままであり、エレンが埋葬された「あの丘の木」の地中で次の宿主をずっと探していたのです。
ハルキゲニアの正体はただの寄生虫ではなく「全ての有機生物の根源」なので宿主が死んでも共倒れになることはないのですね。
少年が巨人の力をどう活用したかは読者の想像次第
なお少年が巨人の力をどのように活用したのかは描かれておらず読者の想像次第です。
- パラディ島を滅ぼした世界への復讐
- パラディ島の復興など平和的な活用
世界から恐れられ「大地の悪魔」とまで呼ばれた巨人の力ですが、それをどのように使うか、全ては人間次第だと言うメッセージが読み取れます。
最終回の解説と伏線回収のまとめ
ベルトルトが死ぬべきじゃなかった理由やミカサの頭痛の原因、その後の世界では再び戦争が起こったことなどについて解説させていただきました。
「お前は自由だ」のコマや最終ページからは作者からの示唆に富んだメッセージも伝わってきましたね。
進撃の巨人は完結しましたが全ての情報が公開された今過去のエピソードを見直すと新しい発見もあり読み方も違ってくるので、今後もまとめ記事にもご注目ください。