進化の家は人工進化の研究組織で、ジーナス博士が理想の新人類の創造を目指して設立しました。博士が人類改造の計画と組織の再建を断念したのは、最終兵器の阿修羅カブトがサイタマに倒され、研究の先を行く力を知ったためです。
ただし、計画の断念は、すべての研究をやめたという意味ではありません。その後のたこ焼き店やゾンビマンとの関わりに表れるのは、博士が持っていた技術と、その使い道の変化です。
進化の家はジーナス博士の人工進化計画
進化の家の中心にあるのは、怪人を集めること自体ではなく、人類を作り替えようとするジーナス博士の思想です。若返りやクローン、生物改造といった研究は、その大きな計画を進めるためにつながっています。
新人類を作ろうとした理由と若返り・クローン
博士が目指したのは、自分の考える理想に合った新人類でした。ONE版9撃目では、その思想を周囲に受け入れられず、他人を低く見るようになった博士が、独力で研究を進める経緯を描いています。
70歳を超えて研究が進展し、自身の若返りやクローン作製へ至るのも、このONE版で示される過去です。若い外見と長い研究歴が結び付き、クローンによって研究を担う自分自身まで増やしていきました。
そこには生命を変える技術への執念があります。けれども、人類を良くしたいという善意だけでは、その人体実験や他者への見方を説明できません。誰をどう進化させるべきかを自分で決めようとした点に、進化の家の危うさが表れているのです。
博士・クローン・実験体は役割が違う
進化の家に関わる人物を、全員同じ立場の構成員と考えると、後の関係が見えにくくなります。研究する博士と、研究によって生まれたり身体を変えられたりした存在は、同じ立場ではありません。
| 人物・存在 | 進化の家での役割 | 転換を読む手掛かり |
|---|---|---|
| ジーナス博士 | 創設者であり人工進化研究の主体 | 計画を断念し、技術を店や別の研究へ転用 |
| 博士のクローン | 博士自身を増やして研究を支える存在 | 独力で計画を進める発想の延長 |
| 阿修羅カブト | 博士でも制御が難しい最終兵器 | サイタマへの敗北が計画を見直す転機 |
| アーマードゴリラ | 初期にサイタマたちへ差し向けられた刺客 | 生き残り、店や買い出しを担う生活へ |
| モスキート娘 | 進化の家で生まれた実験体 | 村田版Web掲載235話では店で接客 |
| ゾンビマン | 不死身シリーズの成功例・サンプル66号 | 研究所を離れ、ヒーローとなって博士を再訪 |
阿修羅カブトは計画の到達点を示す存在、ゾンビマンは研究所の外で別の生き方を選んだ存在です。この違いが、力だけを追っていた博士の変化を浮かび上がらせます。
サイタマとの遭遇で博士は何を諦めた?
博士が諦めたのは、人工進化によって自分の理想へ人類を導く計画でした。施設を壊されたことに加え、研究成果を超えるサイタマの存在そのものが、博士の判断を変えていきます。
サイタマの肉体を研究したかった理由
博士がサイタマを狙った理由は、その強靭な肉体を人工進化の研究に利用したかったからです。差し向けた実験体を退ける力を、計画を前進させる新しい材料として見ていました。
そこで解放した阿修羅カブトは、博士自身にも制御が難しい最終兵器です。その阿修羅カブトさえサイタマの一撃で倒され、研究の集大成が通用しないという結果を突きつけられました。
強い実験体を作れたかどうかなら、阿修羅カブトは大きな成果に当たります。ところが博士が目の当たりにしたのは、その成果の延長では追いつけないサイタマの強さでした。
施設の壊滅と、再建しない選択は別
進化の家が終わった理由を、建物が壊れたからとだけ捉えるのは不十分です。村田版Web掲載129話で博士は、作り直すことはできても再建しないと、ゾンビマンへ説明しています。
博士が認めたのは、自分の人工進化研究がサイタマの力に敗れたということでした。ONE版11撃目では、人類を変える計画をやめ、自分のほうが変わるべきだと受け止めます。
人類を自分の理想に合わせる発想を捨て、自分の生き方を変える道を選んだことが、単なる研究所の壊滅と、ジーナス博士の転換を分ける点です。
博士の最終兵器だった阿修羅カブトについて、通常状態と阿修羅モードの能力や制約、サイタマに敗れた決着を詳しく追えます。
進化の家のその後はたこ焼き店へ
計画をやめた後、博士の研究成果はたこ焼き店を支える技術として使われるようになりました。かつて人類を作り替えようとした科学者が、タコの足を用意してたこ焼きを売るという、落差の大きい後日談です。
再生研究をタコの足に生かしている
村田版Web掲載129話では、博士がクローンとは別に進めていた人体再生研究を、タコの足に応用したと説明します。店の材料を支えるのが、かつての研究で培った技術でした。
つまり、たこ焼き店への転身は、研究者としての能力が消えた結果ではありません。人類全体へ向けていた技術の使い道が、目の前の商売へ移ったのです。
村田版Web掲載235話では、モスキート娘も生きた姿で店の接客に登場します。進化の家の実験体だった彼女が客を迎えていることも、計画を断念した博士たちの新しい生活を示す場面です。
アーマードゴリラは店を手伝い、強さも残る
アーマードゴリラも生き残り、博士の店を手伝うようになりました。村田版Web掲載119話、扉の表記で78撃目では、食材の買い出し中にマーシャルゴリラと遭遇します。
その時のゴリラは、買い出し先の店が閉まって困っているところでした。怪人協会の仲間かと因縁をつけてきたマーシャルゴリラは、人間社会になじんだ彼を罵り、ナイフで襲いかかります。
反撃は一撃で決着し、アーマードゴリラはその場を去りました。この一戦から分かるのは、日常生活へ移っても戦闘力を失っていないということです。
さらに掲載235話では、モスキート娘の血袋を再生するよう博士へ頼んでいます。博士の返答は、培養槽が埋まっているというものでした。
買い出しや店の手伝いに加えて、仲間の世話をする行動が、アーマードゴリラの改心を読む根拠になります。人類へ送り込まれる刺客から、店を支え、仲間の世話をする暮らしへ変わった点が大切です。
マーシャルゴリラを倒した一戦だけで、あらゆる怪人やS級ヒーローより強いとは決まりません。それでも、力がなくなったから戦うのをやめた、という説明はこの場面と合わないのです。
ジーナスは研究を全部やめたわけではない
博士の変化は、店主になったところで終わりません。元被験体であるゾンビマンの再訪と、その本人からの依頼によって、残っていた研究能力が新しい関係の中で使われていきます。
ゾンビマンは元被験体のサンプル66号
ゾンビマンは、博士が進めた不死身シリーズで唯一の成功例となったサンプル66号です。10年以上前に研究所を壊して去った後、S級ヒーローとなって博士のもとを訪れました。
村田版Web掲載129話の博士は、かつての被験体がヒーローになった変化を認めています。進化の家を再建しないと語る相手が、その研究所から離れて生き方を選んだゾンビマンである点も印象的です。
さらに掲載235話では、ゾンビマンのほうから、自分のリミッターを外してほしいと依頼しました。博士は店の地下にあるものへ彼を案内し、元被験体との関係が再び研究へつながります。
今回は、博士が勝手に人類を改造する計画ではなく、ゾンビマン本人が、自分の限界への挑戦を求めた依頼です。研究という行為が残っていても、出発点となる相手の意思が違っています。
ゾンビマンの不死身能力と、戦闘で見えた限界はどうつながるのでしょうか。
人工改造とリミッター解除は同じではない
ジーナス博士の説明では、人工改造とリミッター解除は別です。村田版Web掲載129話で、博士は生物に設けられた成長の制御をリミッターと呼んでいます。
博士が科学実験や怪人化について述べているのは、別の生物となり、元とは違う肉体や能力を得る変化です。しかしその理論では、それだけで成長の制限自体がなくなったことにはなりません。
サイタマは努力によってその制限を破った、というのが博士の説明です。人為的に優れた身体を作ろうとしてきた博士にとって、サイタマは研究成果の強弱だけでは捉えきれない存在になりました。
この理論は、サイタマを見た博士がなぜ計画の敗北を認めたかにつながります。一方で、誰もが同じ訓練をすれば解除できるという、万人共通の手順の提示ではありません。
ONE版の実験・性能テストと、博士のこれから
ONE版では、130撃目でゾンビマンが激しく損傷した身体で実験を受け、138撃目では症状が落ち着いてきたことを受けて実戦で確かめる段階へ進みました。
138撃目では、博士が彼を66号ではなく、ゾンビマンと呼び直すやり取りもあります。研究対象として与えた番号から、本人が選んだヒーローとしての名前へ呼び直すことが、二人の関係の変化を感じさせるのです。
掲載235話からのジーナスには、ゾンビマンの限界を検証する研究者の役割が有力です。本人からの依頼に応じる設備があり、別版のONEでも実験と試験が続くことが、その見通しを支えています。
ただし、ONE版の実験を村田版の地下で既に起きた出来事へ置き換えることはできません。見通しの中心は博士が担う研究者としての役割であり、同じ経過や解除成功を予告するものではないのです。
博士の変化を時点ごとに並べると、断念した目的と残った能力が見分けやすくなります。
| 段階・対象版 | 目指す目的 | 行動・技術の使い方 |
|---|---|---|
| 初期/ONE版9撃目など | 理想の新人類の創造 | 若返り・クローン・生物改造による人工進化研究 |
| 敗北後/ONE版11撃目・村田版Web掲載129話 | 人工進化計画を断念 | サイタマへの敗北を認め、組織を再建しない選択 |
| 店での生活/村田版Web掲載129話 | たこ焼き店の営業 | 人体再生研究の技術をタコの足へ応用 |
| 本人からの依頼/村田版Web掲載235話 | ゾンビマンの限界への挑戦 | リミッター解除の依頼を受け、地下へ案内 |
| 別版の検証/ONE版130・138撃目 | ゾンビマンの状態や性能の検証 | 実験と実戦による性能テスト |
研究が続いているからといって、旧来の人類改造計画へ戻ったという答えにはなりません。逆に、たこ焼きを売っている姿だけで、あらゆる危険な研究を捨てた善人へ変わったとするのも行き過ぎです。
進化の家の場面は何巻・何話?
初期の襲撃と決着は、村田版の単行本2巻9〜11撃目で読めます。博士とゾンビマンの対話、店での再会などは、次の位置が場面ごとの入口です。
| 版・媒体 | 読みたい場面 | 読む・見る位置 |
|---|---|---|
| 村田版・単行本 | 進化の家への突入と阿修羅カブト戦 | 2巻9〜11撃目 |
| 村田版・単行本 | 博士のリミッターの説明 | 18巻89撃目「リミッター」 |
| 村田版Web | ゴリラの買い出しとマーシャルゴリラ戦 | 掲載119話/扉78撃目「暗躍する者たち」 |
| 村田版Web | 博士とゾンビマンの対話・店の説明 | 掲載129話/扉88撃目「リミッター」 |
| 村田版Web | 店の接客とゾンビマンからの解除依頼 | 掲載235話/扉188撃目「謀」 |
| アニメ第1期 | 進化の家の初期決着 | 3話「執念の科学者」 |
| アニメ第3期 | ジーナスがゾンビマンにリミッターを説明 | 通算27話=第3期3話「生物の限界」 |
掲載番号と、扉に書かれた撃目、単行本の撃目は一致しない場合があります。「リミッター」はWebの扉では88撃目、単行本では18巻89撃目なので、番号に加えて題名と版を確かめるのが確実です。
ONE版で博士の転換を追うなら、9撃目の研究の背景から、11撃目の計画断念へ進むと、考え方の変化がつながります。後の研究は、130撃目の実験と138撃目の性能テストが、それぞれの場面の入口です。
まとめ:進化の家は人類改造を断念し、研究の使い道を変えた
- 進化の家は、ジーナス博士が理想の新人類を作るための人工進化研究組織
- 阿修羅カブトがサイタマに敗れ、博士は研究の敗北を認めて組織を再建しない道を選択
- 人類改造計画は断念したが、再生技術をたこ焼き店に生かし、研究能力は継続して使用
- アーマードゴリラは店や買い出し、仲間の世話を担い、マーシャルゴリラへの一撃が示す戦闘力も保持
- ゾンビマン本人から限界への挑戦を頼まれ、村田版Webでは地下へ案内、ONE版では実験と性能テストへ進行
- 人工改造とリミッター解除は別で、依頼や試験の場面を解除成功へ置き換えない
人類を作り替えようとした博士の技術は、たこ焼きの材料まで支えています。その落差には可笑しさがありますが、才能を残したまま目的を変えたことが、この後日談の面白さです。
アーマードゴリラも、強さを失わずに買い出しへ向かっています。サイタマに敗れて終わったはずの進化の家は、博士と元実験体たちが何のために力を使うかを変えたことで、違う暮らしへつながりました。