本作屈指の変人であり大量殺戮者キンブリーは、中立的な物言いから本質を見極めた発言を繰り返します。
その的を射た発言に、周りは何が正しいのか心を揺さぶられます。
- プロフィールや来歴
- キンブリーの魅力とは
- キンブリーの最期
- 信念を貫く美学
彼の言葉の芯にある覚悟を伴う意志の行動について、詳細をまとめてみました。
キンブリーが正論を貫くようになった経緯
なぜキンブリーの言うことが正論と感じるのかを知り前に、キンブリーのプロフィールを見ていきましょう。
キンブリーのプロフィール
- 名前:ゾルフ・J・キンブリー
- 年齢;不明
- 職業:軍属、錬金術師(中佐)、※内戦当時は少佐階級
- 初登場:原作4巻
- 錬成陣:両手の掌
キンブリーは、軍の中佐階級・国家錬金術師であり、「紅蓮」の二つ名を与えられています。
掌に錬成陣があり、彼の得意とする錬金術は触れた対象物を爆発性の物質へ作り変え、広範囲を爆破することです。
イシュヴァール殲滅戦では、敵を一掃し殺戮の限りを尽くす事で軍に大きく貢献しますが、賢者の石を手中にする為に上官を殺害した容疑で服役します。
その後、ホムンクルス側の都合により出所し、エンヴィーの指示を受けてイシュヴァールの生き残りであるスカーを始末する為に活動しまた、医師マルコーの捜索やブリッグズの北壁に血の紋を刻む任務を受けて暗躍し、汚れ仕事も真面目にこなすのが彼のまめな性格を表していますね。
キンブリーの声優が吹き込む狂人さ
声優は数々の主役や主要キャラをこなしている、吉野裕行さんです。
- 愛称:よっちん
- 性別:男性
- 出生地:千葉県
- 生年月日:1974年2月6日(47歳)
- 血液型:B型
- 身長:162cm
- 職業:声優、歌手、ナレーター
- 事務所:シグマ・セブン
少しハスキーボイスの吉野さんの声質は、狂人のキンブリーの雰囲気に馴染んでおり、爆発によって高揚し悦に浸っている場面などは彼以外にできないと思わせるほどの演技力です。
キンブリーとスカーとの因縁
イシュヴァール殲滅時にキンブリーはスカーの前に立ちはだかり、彼の目の前で家族を爆殺し、その結果スカーは、命からがらに生き延びた兄によって爆発で失った右腕を移植されます。
キンブリーの大虐殺がスカーという復讐者を生み出すきっかけを与えました。
顔に大きな×印の傷がある人相の悪いイシュヴァール人のスカーは、イシュヴァラ教の元武僧であることから武術が優れた人物です。 スカーとは何者なのか スカーの兄がしていた研究 スカーの生存について それでは、上記内容を[…]
ロックベル夫妻への尊敬
イシュヴァールの地で医療を続ける為に戦地に残った医者夫婦に、キンブリーは一目会いたかったと吐露します。
夫妻は医師として信念を貫き、敵味方分け隔てなく治療した末に殺害されましたが、そんな夫妻にキンブリーは尊敬の念を抱き、信念を称えたのです。
キンブリーのセリフが正論でカッコいいと感じるシーン
キンブリーは、丁寧な敬語口調で話し、白を基調にしたスーツとコートを羽織る紳士的な風貌をしています。
数多く登場するキャラクターの中で一層の存在感を放つ理由は、紳士的な面から一転した、戦闘時に魅せる愉悦の表情とのギャップではないでしょうか。
イシュヴァール殲滅戦での持論
彼が賢者の石を使い功績をあげた戦いの最中で、味方の軍人が口つらつらと嘆きます。
国民を守るべき軍が国民を蹂躙するといった、この一方的な虐殺に戦う理由を見出せずにいました。
そんな彼らに、
「戦場と言う特殊な場に正当性を求める方がおかしい」
「死から目を背けるな、前を見ろ
貴方が殺す人々のその姿を正面から見ろ
そして忘れるな 奴らも貴方の事を忘れない」引用元:鋼の錬金術師
と軍人で兵士である事の覚悟を説きます。
常に中立の立場にあるキンブリーの言葉は第三者での視点から見れば正論で、彼の言葉は談話の場にいたリザ・ホークアイ中尉の胸に今尚刻み込まれています。
エルリック兄弟との交戦で相手を肯定
「殺さない覚悟…立派なポリシーです。だがそれは戦場において付け込まれる隙になる」
引用元:鋼の錬金術師
錬金術師らしく等価交換の法則に則り犠牲がでるのは仕方がないという考えでしたが、彼ら兄弟は第三の独自の選択肢を翳し、「殺さない覚悟」を信条にします。
キンブリーは相手が子供であろうと意志を貫こうとする人間に敬意を払いました。
体の底に響く爆発音が好き
相手を大量に殺せる爆発とそれを発揮できる戦場が彼の真価を見せる場所でした。
んんーー・・いい音だ。強い意志のおぶつかりあいとはかくも美しき音を奏でるものか…!
引用元:鋼の錬金術師
信念と信念のぶつかり合い、常に死と隣り合わせの仕事が好きでキンブリーこの仕事を続けており、戦闘になると冷静な判断力はそのままで大胆に攻め込みます。
時に声を荒げて口調を崩し、相手を威圧する事もしばしばで、「爆弾狂のキンブリー」という忌み名はまさに彼に似合いの称号です。
キンブリーの最期と死の瞬間
錬金術を賢者の石で増幅したキンブリーは、まさに敵無しで、アルフェンス達によって捕らわれたプライドの救出に駆り出された彼は、アルフォンスとハインケルの二人を相手に戦います。
二人を圧倒するキンブリーはプライドを救出して一時は優勢になるものの、ハインケルが隠し持っていた賢者の石によってアルフォンスが覚醒し、アルフォンスの断続的な錬金術の応酬は目まぐるしいもので、それを可能にする賢者の石の素晴らしさを称えました。
砂塵が舞った最中、ハインケルの奇襲により喉元を噛み砕かれたキンブリーは瀕死の重症を負わされ二人の逃走を許し、そこへ空腹感に襲われたプライドが歩みより、キンブリーを見下ろし、舌なめずりをします。
「世界の変わる様を見てみたい」
人間が勝つのかホムンクルスが勝つのか、世界はどちらを選ぶのか、以前からキンブリーが口にした台詞を思い出し、プライドは自分の中で世界の行く末を見るといいと吐き捨てて、彼を捕食しました。
作中において暗躍していた7体のホムンクルスですが、何れも容姿や性格が異なっており固有の能力でエルリック兄弟や主要人物を苦しめてきました。 ホムンクルスの正体とは? ホムンクルスの最後はそれぞれどうなった? など、ホムン[…]
キンブリーの「美しくない」に隠された美学
キンブリーは基本的に善悪に頓着がなく自分の信念に忠実な人間故に、例え敵であれ何であれ、立派な信念を貫く相手には敬意を払い敵対することもあります。
エドワードとプライドの交戦時、プライドの器が存在を保てなくなるほど消耗してしまい、その為、エドワードの体を乗っ取ることに決めました。
普段からホムンクルスの矜持を謳い人間を下等生物と嘲るプライドがとった行動を魂の奥から見ていたのがキンブリーであり、そのことが矜持を捨てたプライドの邪魔をする要因となり、何故邪魔をするのかを問い質すプライドに、キンブリーは「エドワード・エルリックをわかっていない」と糾弾します。
この窮地の場面でさえ「殺さない覚悟」を貫こうとするエドワードを彼は心底理解していたのです。
また、プライドがホムンクルスの矜持を捨てずに戦っていれば邪魔をしなかったとも明言してあることから、二人の信念の差がキンブリーに選択権を与え、それに対してキンブリーは最期に「貴方、美しくない」と一蹴し、プライドの抵抗力を失くし、魂の暴風雨の果てへと立ち去り消えていくのでした。
キンブリーの発言が正論であるまとめ
なぜキンブリーの発言に説得力があり、正論に聞こえるのかは、
- 中立的な立場から鑑みる立ち位置からの発言力
- 最期まで信念を貫く徹底した行動と相手への敬意
作中で描写される数々に上記の要素を含まされ、描かれてきたからで爆弾狂の彼が行ってきた非道の数々は敵役として舞台を大きくかき乱し、そんな彼が放つ忌憚ない意見や持論は確信を突くものでした。
キンブリーの生き様は見習う事が多く、普段生きている中でも彼の台詞が心に刺さることあり、そのため多くの人に愛されているのだと思います。
正論とは基本的に正しく聞こえますが、時に残酷に感じる、それがキンブリーが体現した正論だったように感じました。