進撃の巨人の物語は、主人公エレンの母親であるカルラ・イェーガーが、彼の目の前で巨人に食われたことから始まります。
そして驚くべきことに、11年以上に渡る連載を経て最終話でこの悲劇の真実が解き明かされるのです。
今回は、
- カルラとエレンのプロフィール
- 悲劇の始まりであるカルラの死亡シーン
- カルライーターの正体
- カルラ死亡の悲劇を引き起こした真犯人の正体
について解説します。
母カルラと息子エレンのプロフィール
本題の前に彼ら母子のプロフィールと関係性について確認しましょう。
カルラ・イェーガーのプロフィール
- 名前:カルラ・イェーガー
- 誕生日:1月29日
- 身長:165cm
- 体重:58kg
- エレンが10歳の時、巨人(カルライーター)に食われて死亡する。エレンが巨人への強烈な復讐心を燃やすきっかけとなった。
エレン・イェーガーのプロフィール
- 名前:エレン・イェーガー
- 誕生日:3月30日
- 身長:170cm(15歳時)
- 体重:63kg(15歳時)
- 母を巨人に食われた経験から巨人を憎み、駆逐することを目標にして生きてきた。
- ミカサやアルミン達故郷の仲間を守りたいと願っている。
- 進撃の巨人の力を用いて戦ってきたが、後に戦鎚(せんつい)の巨人も手に入れ、条件を満たした後は始祖の巨人の力も行使することができるようになる。
カルラとエレンの親子関係
「エレンは母親似」と読者の間で言われている通り、カルラとエレンの二人を並べて見ると大きな目・意志の強そうな眉の形がそっくりですね。
また巨人が迫ってきてあわや殺されるという場面になっても、
- エレンはカルラを助けることを諦めなかった
- カルラはエレンにミカサを連れて逃げるよう叫び続けた
ことから、自分の身の安全よりも相手を助けたいと思う位、2人は心の底からお互いを大事にしていたと分かります。
口ゲンカをすることはあっても、非常に良好な親子関係だったと言えるでしょう。
カルラとエレンの良好な親子関係の背景には、カルラの深い愛情がありました。
エレンがまだ赤ん坊だった頃、当時の調査兵団団長キースは壁外調査で大損害を被り、壁の中へ力なく帰ってきます。
そこで、好意を抱いていた女性であるカルラに自分の情けない姿を見られた上に、彼女から「キースさん このまま死ぬまで…(壁外調査を)続けるつもりですか?」と心配されたキースは逆上し、
- 偉業とは並大抵の範疇に収まる者には決して成し遂げられることではないだろう また理解することすら不可能だろう
- 手当たり次第男に愛想を振りまき 酒を注いで回るしか取り柄の無い者なんぞには 決して
と酒場で働いてたカルラを罵倒する言葉を浴びせます。
しかし、カルラが返した言葉は、
- 特別じゃなきゃいけないんですか?絶対に人から認められなければダメですか?
- 私はそうは思ってませんよ
- 少なくともこの子は…偉大になんかならなくてもいい 人より優れていなくたって…
- だって…見てくださいよ こんなにかわいい
- だからこの子はもう偉いんです この世界に生まれて来てくれたんだから
このセリフから分かる通り、エレンにとってカルラは自分の存在すべてを肯定してくれる母親だったのです。
前述のキースを心配するセリフも、「調査兵団なんてバカなマネ」とエレンに言っていたのも、「生きて存在していることが一番大事」と考える彼女の想いから発せられたものだったのですね。
彼ら母子の強い結びつきは、カルラが息子の存在そのものを愛する母親だったから形成されたのです。
カルラの死亡シーンと行かないでに込められた思い
壁の中で平穏に暮らしていたエレン達でしたが、ある日突然現れた超大型巨人により壁が破壊され、外から侵入してきた巨人達により命が脅かされる事態になりました。
吹っ飛んできた壁の破片でエレンの家は崩壊し、カルラは足が瓦礫に潰されて逃げられなくなってしまい、瓦礫をどかしてカルラを助けようとするエレンとミカサですが、まだ10歳の子供だった彼らには為す術もありません。
このままでは3人とも巨人に食われてしまう…その時、知人の兵士ハンネスが通りがかり、3人を助けるために巨人と戦おうとします。
しかしカルラは、
- ハンネスさん‼待って‼戦ってはダメ‼
- 子供たちを連れて…逃げて‼お願い‼
と自らの命を顧みず懇願しました。
「オレはこの巨人をぶっ殺してきっちり3人とも助ける!」と息を巻いていたハンネスでしたが、巨人と間近で対面したことで恐れをなしてしまい、結果的にカルラの願い通り動けない彼女を見捨て、エレンとミカサを担いでその場から逃げます。
子供たちが救出されていくのを見届けたカルラは、巨人の足音がズシンズシンと近づく中、最後まで2人の心配をしていました。
「エレン‼ミカサ‼生き延びるのよ…‼」
しかし、死の直前になって家族4人の平和な思い出が彼女の中で蘇ります。
彼らが走り去る姿を見つめながら涙を流し、「行かないで…」と小さく呟くカルラ。
強固な自制心で子供たちを守ったカルラでしたが、最後の最後で彼女の本音がこぼれ落ちてしまいます。
しかもこの言葉が絶対に彼らに聞こえないように自ら口をふさいでいるのがまた切ないですね。
歯茎をむき出しにして笑っている巨人(カルライーター)に身体を握り潰され、そのまま食い殺される母をエレンは見せつけられます。
弱い己の無力を嘆き、巨人への憎しみを一気に燃えあがらせる10歳のエレン…進撃の巨人の物語はこのカルラの悲劇から始まったのでした。
もしもの世界線を考察
このカルラ死亡シーンで「もしこの人物がこの行動をしていたら…」というもしの世界線を考察してみましょう。
もしハンネスにカルライーターと戦う勇気があったら
あの日、ハンネスが巨人と戦うことを恐れて逃げてしまったため、カルラは無残に食われてしまいます。
では「もしハンネスが勇気を奮い立たせてカルライーターと戦っていたら」どうなっていたでしょうか?
残念ながら「ハンネスは食い殺され、その後エレン・ミカサ・カルラも全滅していた」可能性が高いでしょう。
原作12巻第50話「叫び」で、ハンネスは因縁のカルライーターと遭遇し、「見てろよ!お前らの母ちゃんの仇を‼俺が‼ぶっ殺す所を!」と勇んで戦いましたが、あっという間に下半身を食いちぎられてします。
カルラの事件を後悔し、5年間彼なりに訓練を積んできたのかもしれませんが(だから戦って仇を取る自信があったのかもしれない)、それでも一般の兵士であるハンネスでは巨人たった一体にも敵いません。
5年前より強くなったと思われるハンネスでさえ死亡してしまったので、平和な日常の中飲んだくれている兵士だった当時の彼が勇気を出してカルライーターと戦ったとしても、勝てる見込みはほぼなかったでしょう。
悲しい事実ですが、「ハンネスに勇気がなかったからエレンとミカサは生き延びることができた」と言えます。
もしカルラが「行かないで」を伝えていたら
それでは、「もしカルラが『行かないで…』という本音を3人に伝えていたら」どうなっていたでしょうか?
エレンは何が何でもカルラを助けようともがいたでしょうし、ミカサも大事な家族である彼女を見捨てることはできなかったはずです。
巨人に恐れをなしたハンネスだって、巨人に立ち向かうまではいかなくても、彼女を置いて逃げることに迷いが生じた可能性があります。
そうすると逃げ遅れた彼らは、やはりカルライーターに全滅させられていたことでしょう。
つまり、「最後まで本音を伝えなかったカルラの鉄の自制心によってエレン達は救われた」と言えます。
このように、
- ハンネスは勇気を出すことができずに逃げた
- カルラは本音を抑えて伝えなかった
という登場人物が偶然起こした一見悲劇的に見える行動が、実は主人公達の生存ルートに繋がっていたことが見て取れます。
諌山先生のストーリー作りの見事さが分かりますね。
カルライーターの正体はダイナ・フリッツ
進撃の巨人の悲劇性の象徴とも言えるこの事件ですが、「巨人の正体は人間である」ことが分かった物語中盤、更に恐ろしい事実が明かされます。
それは、カルラを食った巨人(カルライーター)の正体…人間の姿だった頃の名前はダイナ・フリッツでした。
姓の通りフリッツ王家の血を引く重要な人物であり、エレンの父グリシャがマーレ大陸にいた頃の妻です。
つまり、グリシャの前妻ダイナが後妻カルラを食い殺したということ。
恐ろしい運命の巡り合わせの悪さに、グリシャの記憶を引き継いだエレンも相当なショックを受けていました。
- 今 親父の記憶と繋がった…
- あの巨人……お前だったんだな ダイナ…
そして、ダイナ巨人がカルラを食ったのは偶然ではなく、ある者が意図的に引き起こしたことも後に判明します。
カルライーター(ダイナ巨人)の最後
カルライーターもといダイナ巨人は人間に戻ることなく、最後は他の無垢の巨人達に食いちぎられてしまいます。
この時のエレンは父の記憶に目覚めていなかったため、ダイナ巨人の正体を知らず、ただただ母を殺した憎い仇と思っていました。
エレンはフリッツ王家の血を引くダイナ巨人に触れたことで、意図せずに始祖の巨人の力を一瞬引き出し、無垢の巨人を操って襲わせます。結果的に「母さんの仇をぶっ殺してミカサを守る」ことができたのです。
こうして母カルラと同様、ダイナも巨人に捕食され絶命するという運命を辿ったのでした。
カルラ死亡の悲劇を引き起こした真犯人はエレン
「カルライーター=ダイナ巨人」という事実以上に衝撃的な真実「カルラ死亡の原因はエレンである」ということが、最終話で判明します。
その解説の前に、第96話と第97話で張られていた2つの伏線をおさらいしましょう。
作中で張られていた2つの伏線
まずは作中で張られていた伏線について。
ダイナ巨人がベルトルトを見逃した伏線(24巻第96話)
物語の始まりである845年、ベルトルトは超大型巨人に変身し、エレン達の住む街の壁を蹴破ります。
その後すぐ変身を解き、人間の姿で壁の中へ潜入しようとしますが、運悪くダイナ巨人に発見されてしまいました。
この時は立体起動装置を手にしたことがないベルトルト。巨人化を解いた直後の疲労した身体では、まだ再巨人化できない。このままではあっさり捕食されてしまうという大ピンチです。
しかし、ダイナ巨人はなぜかベルトルトをスルーして壁の中へと進みます。
この後エレン達の元へ向かい、カルラを捕食するという展開です。
ベルトルトも「え…?」と言っている通り、この時点では「なぜダイナ巨人がベルトルトを襲わなかったのか」は読者にとっても謎のままでした。
エレンがファルコに語った地獄の伏線(24巻第97話)
エレンが正体を隠してファルコと接触したシーンで、彼は戦争で負傷した兵士達について「皆『何か』に背中を押されて地獄に足を突っ込むんだ」「大抵その『何か』は自分の意志じゃない」「他人や環境に強制されて仕方なくだ」と語っていました。
ところが、急に語気を強めて言い放ちます。
- ただし自分で自分の背中を押した奴の見る地獄は別だ
- その地獄の先にある何かを見ている
- それは希望かもしれないし 更なる地獄かもしれない
- それはわからない 進み続けた者にしか…わからない
この時も読者からすると、「エレンが言う『自分で自分の背中を押した奴の見る地獄』って何のことだろう?」「エレンは何をしようとしているんだろう?」と不穏な空気を感じるのみで、その真意は分かりませんでした。
これらの伏線は最終話のエレンとアルミンの会話にて回収され、「エレンが始祖の力でダイナ巨人を操り、ベルトルトを見逃してエレンの家へ向かわせ、カルラを食わせた」という恐ろしい真実が明かされるのです。
大切に想っていた母親が死んだのは、エレン自らが引き起こした悲劇だったことを聡いアルミンは瞬時に察したようです。
更にベルトルトをスルーしたのは、死にかけたアルミンに超大型を継承させて生き返らせるためということもきっと分かっていたでしょう。
なぜエレンは自分で自分の背中を押したのか?
エレンが大切な母親を自らの意志で巨人に食わせる決断をした理由について、エレンの考えた戦略とエレンの生来的性質に分けて考察します。
エレンが考えた戦略上の理由
エレンは「ミカサやアルミン達パラディ島の人々を守る」という目的達成のため、自分がやるべき事を順序立てて考えます。
- アルミンがエレンを倒した英雄となり、世界の人々と対話して和平交渉を成立させる(理想のゴール)
- 超大型巨人VS進撃の巨人の戦いを繰り広げて、人々に目撃させる
- 地鳴らしで大虐殺を決行し、島の外の世界の戦力を大幅減少させる
- カルラを襲わせて、10歳の自分自身が巨人を憎むよう仕向ける(その後、自分たちに敵意を向けてくる島の外の世界を憎むようになる)
- 巨人化の注射薬が手に入ってからアルミンにベルトルトを食わせて超大型巨人を継承させるために、「あの日」のベルトルトを見逃す(始祖の巨人の力を行使)
という戦略を立てたのです。
もしベルトルトがダイナ巨人に食われていたら、超大型巨人はダイナに引き継がれてしまっていたでしょうし、例え彼女が人間の姿に戻れたとしても、訳も分からず他の無垢の巨人に食われていた可能性が高く、そうなると、超大型巨人は行方不明になり、「アルミンがエレンを倒した英雄になる」絵図が描けなくなります。
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自ら立てた戦略通りに事を進めるためには、カルラを失うことで強烈な目的意識(巨人を駆逐する)を持つ自分を作り上げる必要があったのです。
伏線でエレンが語っていた「自分で自分の背中を押した奴」とは、「自分の意志で10歳のエレンが巨人を憎むよう仕向けたエレン自身」のことだったのですね。
エレンの生来的な性質上の理由
次に、エレンという人物の持つ性質について考えていきます。
彼が強い愛情と原始的な暴力性を兼ね備えている存在だということも悲劇を引き起こした理由と言えるでしょう。
前述の通りエレンは、世界中を敵に回しても、地鳴らしで大虐殺を繰り広げても、自分の存在を丸ごと愛してくれる大切な母親を殺すことになっても、ミカサやアルミン達故郷の人々を守りたかったことが分かります。
それ程強く自分と関わった「人」を愛していたのですね。(かつてクルーガーがグリシャに言ったセリフと重なる)
またそれだけではなく、
- どうしてもすべてを平らにしたかった自分自身の原始的欲求に抗えなかった
とも考えられる描写もありました。
大人になったエレンが「(この世のすべてを平らにすることを)何でかわかんねぇけど やりたかったんだ どうしても…」と言っているシーンでは、赤ん坊のエレンがグリシャに抱かれている記憶が挿入されます。(エレン自身はこの記憶を意識上は覚えていない様子)
兄のジークとは違い、彼は赤ん坊の頃から父親に自由を肯定されて生きてきました。
グリシャとしてはジーク本人の気持ちを無視し、自分の支配下で抑圧して育ててしまったことへの後悔と反省の念があったのでしょう。
しかし、グリシャの想定していた自由とは大きく異なり、エレンの「自由」は自分の行く道を阻むものすべて駆逐するといった純粋で一途な「暴力性」をはらんでいました。
一般的にはそのような暴力性は、「虐殺はダメだ」「話し合って解決しよう」といった倫理観や理性で抑制されるものですが(ハンジやアルミンがその例)、エレンの暴力性はこうした一般的な価値観で抑圧されることなく、発揮されてしまったのです。
こうして、子供の頃から持っていた「原始的な暴力性=自由」を止められなかったことも、悲劇を引き起こした原因として考えられます。
このように、極端に強い愛情と暴力性を併せ持つ存在がエレンなのであり、これらの性質が故に「大切なカルラを殺す」「大虐殺を決行する」という地獄のような選択をすることができたのです。
漫画進撃の巨人の主人公エレン・イェーガーは、幼い頃に母親を巨人に食われた過去を持ち巨人を駆逐することを目標に生きてきました。 しかし、現在のエレンは巨人を操り世界を滅ぼそうとしています。一体なぜエレンは巨人ではなく人類を虐殺することを[…]
カルラの「行かないで…」の言葉の意味とカルライーターの正体のまとめ
- カルラの愛により、カルラとエレンは良好な親子関係を築いていた
- カルラ死亡により、10歳のエレンは巨人を強烈に憎むようになった
- カルライーターの正体はダイナ・フリッツで、父グリシャの前妻だった
- カルラ死亡の悲劇は、始祖の力を得たエレンが意図的に引き起こしたものだった
始まりの悲劇から全てエレンが仕組んだことだと判明し、長く連載を見守ってきた読者も相当驚かされた最終話でした。
彼が進み続けた先に見たのは大虐殺という「地獄」であり、大切なミカサやアルミンを守って未来を託すことができたという「希望」でもあったのですね。
ただカルラの子供を助けたいという思いと口を手で覆いながら「行かないで…」というセリフもエレンの仕業じゃないか、と疑いましたがここはカルラの子供の命と自分の命がかかった本当の気持ちなんだと分かって少しホッとしました。
ハッピーエンドともバッドエンドとも一概に言い切ることのできない進撃の巨人…実際にこのマンガを読んで、ご自分の心が何を感じるのか確かめてみることをおススメします。