漫画進撃の巨人の主人公エレン・イェーガーは、幼い頃に母親を巨人に食われた過去を持ち巨人を駆逐することを目標に生きてきました。
しかし、現在のエレンは巨人を操り世界を滅ぼそうとしています。一体なぜエレンは巨人ではなく人類を虐殺することを決意したのでしょうか。
今回は、
- エレンが世界を滅ぼそうと決意をする背景
- エレンが世界を滅ぼそうとする目的
- エレンが持つ子供と大人の二面性
- エレンに対峙するアルミン
についてまとめました。
エレンが世界を滅ぼそうと決意をする背景
エレンが世界を滅ぼす決断をするのには、進撃の巨人世界がどういった状態であるのかが深く関係しています。
マーレ国など壁の外の世界の存在
エレンやアルミン達が夢見ていた「炎の水・氷の大地・砂の雪原」だけではなく、壁の外にも人類がいてエレンの故郷であるパラディ島を囲む海の向こう側には、ライナー達の故郷・大国マーレがありました。
マーレは中東連合艦隊と戦っているので、マーレ以外にもたくさんの国が世界には広がっていたことが分かります。
恨まれ続けるパラディ島の人々
エルディア人でありながら他国と交流を持っていたヴィリー・タイバーが語る歴史はこうです。
始祖ユミルが出現してから100年前まで、エレン達の祖先のエルディア人によって世界は虐殺の限りを尽くされていて、その罪の歴史を嘆き平和を望んだエルディアのフリッツ王は、100年前にパラディ島へと退き、三重の壁を築きます。もうエルディア人が世界の誰をも傷つけることがないようにと。
しかし、虐殺の歴史は許されることはなく、その後100年の間現在に至るまでもエルディア人は世界の人々から恨まれ続けていました。
エレン達がライナー含むマーレ勢を撃退
パラディ島がいまでも世界中から脅威とみなされている理由は、世界を踏み潰す地鳴らしを発動させる力を持つ始祖の巨人を有しているから。
その始祖の巨人の力を宿すのがエレンです。
始祖を奪還するためライナー達はパラディ島に潜入しましたが、エレン達に正体を見破られ、撃退されます。
結果、ライナー(鎧の巨人)は命からがらマーレへ帰ることができましたが、アニ(女型の巨人)はパラディ島調査兵団に拘束され、ベルトルト(超大型巨人)はアルミンに食われ命を落とします。
こうして5年かけたマーレの始祖奪還作戦は失敗に終わり、始祖の巨人の力はエレンの中にある状態のまま4年の時が過ぎました。
エレンが世界を滅ぼそうとする目的
世界を滅ぼそうとするエレンの目的は一体何なのでしょうか?
エレンは未来を見る
ライナー達を撃退した後、王家の血を引くヒストリアと接触したことをきっかけに、エレンは未来の自分の記憶を見ました。
エレンが語る「あの景色」とは「エレン(進撃の巨人)と超大型巨人群が地鳴らしで世界を踏み潰していく光景」だったと推察されます。
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仲間を守るため世界を滅ぼすことを選択
未来の自分の記憶を見たエレンが選択したのは、ミカサ・アルミン達パラディ島の人々を守るため自分だけが悪魔となって世界を滅ぼしに行くという道でした。
始祖ユミルを味方につけ、始祖の巨人の力を行使したエレンは、全てのエルディア人が繋がる道を通して語りかけます。
世界がパラディ島に向ける憎悪をはね返し、パラディ島にいるエルディア人以外全ての人類を地鳴らしで踏み潰すことを宣言するエレン。
このまま人類はエレンによって絶滅させられてしまうのでしょうか。
アルミンは話し合いの道を探る
幼なじみのアルミンはエレンの虐殺を止めるため、一生懸命説得しようとします。
- 不可侵条約を結んで終わりにできる!!
- これ以上誰も殺さなくていい!!
- 島はもう大丈夫だ!!
と、暴力ではなく世界と話し合い・交渉することでパラディ島を守ろうとエレンに語りかけるアルミン。
- 話してくれよ!!
- 僕らはずっと一緒だ!!
エレンとも話し合いたい、一人で遠くへ行かないでほしいことを痛切に訴えかけます。
しかし、エレンは「話し合いは必要ない」と断言。
- オレを止めたいのならオレの息の根を止めてみろ
- お前らは自由だ
とエレン自身と戦うことを選択させようとし、こうしてアルミンの交渉は潰えてしまいました。
エレンが持つ子供と大人の二面性
現在19歳の青年となっているエレンですが、始祖の力を操られるようになって以降、あえて子供の姿で描かれているシーンがあり、子供の姿と大人の姿その対比を見ることで、エレンの精神が今どういう状態なのか解説します。
子供のエレン
子供姿のエレンの足元には地鳴らしで踏み潰されていく人々や、花も人の命も同様に奪っていく圧倒的な暴力性が描かれています。
余談ですが、アニメ第1期のオープニング曲『紅蓮の弓矢』に「踏まれた花の名前も知らずに」という歌詞があり、それを踏まえたシーンであるようです。
そして、「自由だ」と語る子供エレンの表情はこの上なく晴れやかで、子供らしい無邪気さを感じさせます。
- 自由を何よりも求める
- 世界を滅ぼす程の暴力性を持つ
- 無邪気
これらが子供エレンの特徴と言えます。
大人のエレン
対して、大人姿のエレンはどうでしょうか。
母カルラのことを思い出しながら「死ぬべきは…オレ達エルディア人なんじゃないのか?」と自死の道について思いを巡らせます。
地鳴らしで死ぬことになる人数や巨人という脅威の問題について冷静に考えようとしますが、表情をこわばらせ、そんな結末(=エルディア人が自死する道)納得できないと断じるのです。
地鳴らしで踏み潰すことになるであろう少年ラムジーに「ごめん…」と言って泣く大人エレン。エルディア人である自分、命を奪うことへの罪の意識、それでも仲間を守りたいという葛藤が見て取れます。
- これから虐殺を繰り広げることへの罪の意識
- それでも自分や仲間達が死ぬのを黙ってみていることはできない気持ち
- 相容れない思いに葛藤
これらが大人エレンの様子として描かれており子供エレンと大人エレンは異なる特徴を持っていて、エレンの内面の乖離した気持ち(=二面性)が見て取れます。
この矛盾した思いを抱えているエレンの精神は非常に不安定な状態と言えるでしょう。
エレンに対峙するアルミン
次にエレンに対峙するアルミンの考える未来とは何なのでしょうか。
エレンの自由とアルミンの自由
暴力と自由を手に入れた子供エレンが語りかけるのは、19歳の現在のアルミン。
子供エレンはわざわざアルミンだけを道に招き、自分が自由を手に入れた景色をどうしても見せたかったようです。
ここで、エレンとアルミンそれぞれの「自由」について整理してみましょう。
- エレンの自由=どんな障害があっても踏み潰し、誰にも邪魔されないで進み続けること
- アルミンの自由=炎の水・氷の大地・砂の雪原など見たことのないものを見に行って理解すること
幼い頃2人で一緒に夢見た「自由」が全く違うものとなったことが分かり、アルミンは茫然としています。
強い信頼関係で結ばれていたはずのエレンとアルミンの現在の姿を見て、心を痛めた読者も多かったでしょう。
始祖ユミルと共にいる子供エレンの表情
この世の誰よりも自由になったはずのエレンですが、道で始祖ユミルと共にいる時の彼の表情は奴隷時代の始祖ユミルとそっくりです。
エレンは未来を見たことにより、「進まなければならない」「殺さなければならない」「戦わなければならない」という思いに縛られている(=不自由)である描写と考えられます。
アルミンは道の座標でジークと会う
アルミンはエレンを止めることも話し合うこともできず、このまま物語は終わってしまうのでしょうか。
現在アルミンは巨人に囚われ窒息死されかけていましたが、ふと気が付くと道の座標にいました。
そこでアルミンは、エレンの兄であるジークに出会います。
始祖の巨人の力の鍵であるジーク。
全てのエルディア人が繋がる道で、アルミンが彼と何を話し合うのかが今後の展開のターニングポイントになりそうです。
まとめ
今回は、
- 世界はパラディ島を恨み、絶滅させようとしていた
- エレンはパラディ島の仲間達を守るために世界を滅ぼそうとしている
- 子供エレンはエレンの中の暴力と自由、大人エレンは罪の意識と葛藤を描いている
- エレンとアルミンの自由は乖離してしまったが、アルミンはまだ話し合おうとしている
ということついてまとめました。
世界を滅ぼすという道に囚われ進み続けるエレン。
果たしてアルミンはエレンの答えとは別の道を見つけることができるのでしょうか。今後も進撃の巨人を追いかけていきましょう!