【進撃の巨人】ラスボスはミカサだった!愛するエレンを殺したのはなぜ?

進撃の巨人の原作1巻では、主人公エレンにとってのラスボスは超大型巨人であるように描かれていました。

しかし、第138話「長い夢」でエレンの首を切り落としたのは、エレンにとって家族と同等の存在ともいえるミカサだったのです。

これまでエレンを愛し必死に守ってきたミカサが、なぜエレンを殺すことになったのでしょうか?

今回は、

  • ミカサがエレンを殺すまでの経緯
  • ミカサがエレンを殺した理由
  • エレンを殺してミカサは誰よりも自由な存在になった

についてまとめました。

The Final Seasonのエレンとミカサのプロフィール

本題に入る前に、エレンとミカサのプロフィール・二人の関係性を振り返ってみましょう。

エレン・イェーガー(19歳)

  • 名前:エレン・イェーガー
  • 年齢:19歳
  • 誕生日:3月30日
  • 身長:183cm(15歳時より身長が13㎝伸びた)
  • 体重:不明
  • ミカサやアルミン達を守るため、地鳴らしで世界を滅ぼそうとしている。
  • かつてミカサに「オレは…お前の何だ?」と真剣な表情で問いかけたが、焦った彼女に「あなたは家族」と言われた。

ミカサ・アッカーマン(19歳)

  • 名前:ミカサ・アッカーマン
  • 年齢:19歳
  • 誕生日:2月10日
  • 身長:176cm(15歳時より身長が6㎝伸びた)
  • 体重:不明
  • 世界を滅ぼそうとするエレンを止めたいと思っている。
  • 命の恩人であるエレンに執着し、彼を守るために生きてきたが、大虐殺を決行するエレンと対立することになってしまった。

ミカサがエレンを殺すまでの経緯

ここからはミカサがエレンを殺すまでの経緯と気持ちの変化を見ていきましょう。

ミカサはエレンを殺す決心ができなかった

エレン(進撃の巨人)との最終決戦で、超大型巨人を宿すアルミンを敵に連れ去られたミカサ達はいきなりピンチに陥りますが、飛行能力を持つファルコ(顎の巨人)に乗ったアニ達に一時救出されます。

しかし、リヴァイは負傷してもう戦えそうになく、ミカサ側の最大戦力であるアルミンも捕らわれたまま。

最も戦闘経験がある兵長リヴァイが状況を冷静に分析して、

  • もうエレンを気にかける余裕はなくなった
  • 一方でアルミンを救助する…超大型の爆発が頼りだ
  • もう一方でエレンを狙ってうなじも攻撃しろ…二班に分かれて同時にやるぞ

と指示を出しますが、エレンを諦めきれないミカサは「…でも」と決断できずにいます。

対照的に、コニーとジャンは未練はあるけれど、もう迷っている時間はないと腹をくくったようです。

  • コニー「ただでさえ相手は始祖の巨人なんだぞ‼手加減して何ができるっていうんだよ⁉」
  • ジャン「…ミカサ」「エレンを…殺そう」

同期の二人の心が決まったことが分かっても、ミカサは何も言えずにいます

また、ミカサのことをずっと好きで見つめ続けていたジャンは、ミカサがどれだけエレンを大切に想っているか知っているはず。

ミカサの気持ちを分かっていながらあえてハッキリと「エレンを殺そう」と言うのはとても辛い役割ですが、「現状把握能力が高い」ジャンだからできたことですね。

そんなジャンに言われたからこそ、ミカサにも事態の深刻さ・猶予のなさがより明確に伝わったのでしょう。

ショックを受けるミカサを見たアニは

  • 「あんたはアルミンを救うことだけを考えな‼」
  • 「それ以外は考えなくていいから…」

と言いました。

リヴァイの作戦の「アルミン救出班」にミカサを誘導したのは、ミカサはエレンを殺すことができないと分かっているアニの優しさですね。

やっとのことで「…うん」とだけ頷き、ミカサは動き出すことができました。

こうして、

  • ミカサ・アニ・コニーはアルミンの救出
  • ジャン・ライナー(後にピークも加わる)はエレンの首を爆破

へと向かいます。

【完結済み】進撃の巨人
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第35回講談社漫画賞。シリーズ累計1億部突破!2013年アニメ化、2015年実写映画化。2009年「別冊少年マガジン」で連載を開始し、2021年完結

首を落としてもまだ死なない進撃の巨人

敵に捕獲されたアルミンは「死の存在しない世界=道」でジークと会話をすることで和解し、「道」で眠っていたクサヴァー・グリシャ・ベルトルト達の力を借りることに成功しました。

ベルトルト巨人達が助けてくれたことに驚く間もなく、ジークが自らリヴァイの前に現れ切り殺されることで地鳴らしも止まります

更にジャンが進撃の巨人の首を爆破し、立て続けにアルミンが超大型巨人に変身する際の大爆発で骨ごと吹っ飛ばしました。

しかし、超大型の爆発を受けても復活してきた進撃の巨人(エレン)

「どうすりゃいいんだ」とコニーが言う通り、ミカサ達はこれ以上の攻撃方法が見つかりません。

最大最悪のピンチと絶望

地鳴らしが止まり、ガビ・ファルコ・ピークはマーレから逃れてきた自分たちの家族と再会できました。

「俺達…間違ってなかったよな 地鳴らしを止めたこと…」とコニーが言い、ミカサ達が一息ついたのも束の間、取り付いていたエレンと引きはがされた「光るムカデのような奴=始祖の巨人の力」から発生した煙を吸ってしまったコニー・ジャン・ガビはあっという間に無垢の巨人にされてしまいます

(アッカーマンの血を引くリヴァイ・ミカサ、巨人の力を持つアニ・ピーク・ファルコ・ライナー・アルミンは煙を吸っても無垢の巨人にはならない)

もちろんライナー達の家族も同様でした。母が巨人にされたと気付き、「まさか…なぜ⁉母さん⁉」と驚愕するライナー

泣きながら戦うピークとアニ。ライナーは巨人化したガビ達に嚙みつかれながら、「俺達はどうすれば報われるんだ?」と悲しみます。

これまで共に戦ってきた仲間に、大切に想っていた家族に「さようなら」も「ありがとう」も言うこともできず殺し合うしかない、最大最悪のピンチと絶望が彼らを襲いました。

悪夢のような現実を目の前にして、激しい頭痛を感じるミカサ

  • もうこれ以上耐えられない
  • 私達の家に…帰りたい

そうミカサが思った瞬間、場面は唐突に切り替わります。

ミカサがエレンを殺した理由

「エレンさえいてくれればいい」そう思い続けたミカサがエレンを殺した理由は何だったのでしょうか?

長い夢と二人で逃げた世界線

目を覚ましたミカサの前には、「風邪ひくぞ」と声をかけるエレンの姿が。

  • いつの間に寝てたんだろ…
  • 何か…長い夢を見てた気がする

先ほどの悪夢のような絶望の状況このミカサが見た夢だったようです。

この世界線では、

  • 「オレは…お前の何だ?」とエレンがミカサに問いかけたあの日、「あと4年の余生を静かに生きよう」「誰もいないところで」「二人だけで」とミカサがエレンに言った
  • ヒストリアを犠牲にすることも、地鳴らしで世界を滅ぼすこともエレンはできなかった
  • 二人は戦いも問題もすべて放り出して逃げ、隠れて暮らしている

ということが彼らの会話から分かります。

そして、ミカサの想いにエレンが応えたという事実も同時に判明しました。

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進撃の巨人の表紙

エレンの願いを拒否したミカサ

巨人の力を持つエレンはユミルの呪いにより残りの寿命は4年程度ですが、ミカサの人生はエレンが死んだ後も続きます。

ここでエレンはミカサに約束を頼みました。

  • オレが死んだらこのマフラーを捨ててくれ
  • お前はこの先も長生きするんだから オレのことは忘れて 自由になってくれ
  • 頼むよ ミカサ 忘れてくれ

このマフラーはエレンとミカサの絆の証ですので、マフラーを捨ててくれと言ったのは、「ミカサには自分との関係や思い出に縛られずに自由に生きてほしい」というエレンの想いが込められていました。

この瞬間、場面はまた切り替わります。

あの悪夢の現実に意識を戻したミカサは、胴体に隠していたマフラーを自ら巻き直し、力強い目をして「ごめん できない」と言い放ちました。

この毅然とした拒否の言葉は、先ほどのエレンの「このマフラーを捨ててくれ」「オレのことは忘れて 自由になってくれ」に対する返事ですね。

愛と言い換えてもおかしくない「自分との関係や思い出に縛られずに自由に生きてほしい」というエレンの願いを、ミカサは「できない」と却下します。

  • エレンが願ったミカサの自由=エレンのことを忘れて自由に生きること

でしたが、

  • ミカサが選んだミカサの自由=エレンのことをずっと忘れずにエレンを愛して自由に生きること

だったのです。

エレンは生きている限り今後も大虐殺を続けるでしょう。そんなエレンを愛しつつも、エレンを殺して世界の人類を救う、そのことをずっと忘れずに生きていくことをミカサは選んだのでした。

リヴァイ・ファルコ・アルミンの協力を得て進撃の巨人の口の中に入ったミカサは、素顔のエレンと対面します。

これが対等に向き合った二人の最後の逢瀬。何の言葉もなく、ただ見つめ合い、殺し殺される瞬間なのですが、ミカサの表情は悲しみを湛えつつも強く美しいですし、エレンの瞳もひどく澄んだ眼差しをしていました。

「世界を滅ぼしたい」というエレンの意志をすら、ミカサは正々堂々自分の意志で断ち切り…

自ら手をかけたエレンの首を優しく持ち上げ、そっと口づけします。

進撃の巨人でエレンとミカサの明確な愛が描かれたのはここが初めてです。

ミカサとエレンの最初で最後のキスシーンを試し読みする

主人公エレンにとってのラスボスはミカサだったこと、主人公がヒロインに敗れたこと、そこが一番のラブシーンになったことが漫画・進撃の巨人の異質かつ魅力的なポイントですね。

エレンを殺してミカサは誰よりも自由な存在になった

なぜ自分よりも大切なエレンを殺してミカサは誰よりも自由な存在になったのでしょうか。

エレンに従属していたミカサ

エレンに命を救われた日から基本的にミカサはエレンに従属する存在でした。

エレンが「早く帰ろうぜ オレ達の家に」と言い、ミカサは「うん 帰る」と頷いた時から始まり、彼らはそのままの関係性で成長してきたのです。

自分の方が身体的に強くなっても、エレンの世話をおせっかいなまでに焼いていても、エレンを唯一残った家族と認識するミカサは、エレンを守りエレンの後に付き従って生きてきました。

エレンが調査兵団に行くと決めたから「私は調査兵団にする」と決めたのも分かりやすい例ですね。

このように、エレンを拠り所として、エレンに執着し、エレンに依存するのがミカサだったのです。

エレンに従わず自由になったミカサ

ところが、エレンが単独でマーレに乗り込んだり、世界を滅ぼす地鳴らしを発動させたりしたことで、二人の関係性は変化。

ミカサは「『世界を滅ぼしたい』という意志を持つエレンを止めたい」と思い始め、ついに第138話で「エレンを止めたいからエレンを殺す、そしてずっと忘れずに生きていく」という意志を通します。

こうして彼女は、執着・依存する対象であったエレンという存在を乗り越え、エレンに付き従うのではなく対等に向き合い、愛するエレンの願いを拒否し、自分の意志を貫くという誰よりも強く自立した自由な存在になったのでした。

今までリヴァイやアルミンの指示を受けていたミカサが、リヴァイ達に「私がやる みんな協力して」と指示を出しているのも象徴的ですね。

ミカサが自由になる伏線

進撃の巨人の骨の上の戦いでアルミンが捕らわれ、多数の敵に囲まれたミカサが「来い‼私は強い‼」と自らを奮い立たせて叫ぶシーンで、ファルコ(顎の巨人)の翼がミカサの背後に被るコマがあります。

まるでミカサから自由の翼が生えたかのような画面ですが、これはこの後ミカサが自由な存在になることの伏線なのかもしれないとファンの間で話題になっていました

ミカサがエレンを忘れない伏線

原作2巻でエレンが巨人に食われて死んだと報告を受けたミカサは、一度は生きることを諦めようとします。

ところが、

  • 死んでしまったらもう あなたのことを思い出すことさえできない
  • 何としてでも 勝つ!
  • 何としてでも生きる‼

と「エレンを思い出すために生きる」と決意し巨人に立ち向かうシーンがありました。

このように、連載初期のミカサにも「エレンを忘れたくない」という自分の意志があったことが分かります。

この意志が最終話直前になって最も大事なものとして描かれたのは、見事な伏線と言わざるを得ません。

最初から存在していた長い夢と涙の伏線

これらの伏線の数々は進撃の巨人が連載された当初から実は描かれていました。

第1話のエレンの長い夢と涙

第1話「二千年後の君へ」では、エレンが「なんかすっげー長い夢を見ていた気がするんだけど…」と言い、エレン本人も理由が分からず涙を流しているシーンがありました。

そして、この第1話のエレンは「ミカサと二人で逃げた世界線の長い夢を見て」泣いていたことが第138話で判明します。

第138話のミカサの長い夢と涙

第138話「長い夢」では、逆にミカサが長い夢から覚めて泣いているシーンがあります。

第138話のミカサは「エレンを殺さなければならない悪夢の戦いをする長い夢を見て」泣いていたのでした。

エレンとミカサ二人の見た長い夢はそれぞれ別の世界線の出来事だったこと、どちらの世界線の夢を見ても涙を流す結末になってしまうことが既に第1話で決まっていたようです。

結末の壮大な伏線が載っている1巻を試し読みする

作者の諌山創先生が仕掛けたこの緻密で壮大な伏線にファンは驚かされました。

ラスボスがミカサだったことのまとめ

ミカサがなぜエレンを殺したのかついて、

  • 最大最悪のピンチと絶望の中でミカサはエレンと逃げた世界線の長い夢を見た
  • 長い夢の中でエレンの「忘れてくれ」という願いを「できない」と拒否し、エレンをずっと忘れずに生きていくという自分の意志を貫くためにエレンを殺した
  • エレンを殺してミカサは誰よりも自由な存在になった

ことを解説しました。

もう一度原作を最初から読んでいくと、エレンとミカサの最後の逢瀬で伏線が見事に結実していき、この物語が本当に「美しき残酷な世界」だということをより一層感じられますね。

【完結済み】進撃の巨人
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第35回講談社漫画賞。シリーズ累計1億部突破!2013年アニメ化、2015年実写映画化。2009年「別冊少年マガジン」で連載を開始し、2021年完結