漫画家・荒川弘の代表作の1つに数えられる作品が、2001年から2010年まで「月刊少年ガンガン」で連載された、鋼の錬金術師です。
本作の中で長い間、主人公のエドワード・エルリックと、アルフォンス・エルリックの前に立ち塞がっていたのが、ホムンクルスと呼ばれる存在でした。
個性的なキャラクター性で敵ながら人気を博した存在であるホムンクルスたちですが、彼らは一体何者であり、どのような目的を持って動いていたのでしょうか。
そこで今回は、
- 鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの正体と目的
- 鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの一覧と最後
について解説を行い、ホムンクルスという存在とキャラクターそれぞれを深掘りしていこうと思います。
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの正体と目的
鋼の錬金術師に登場する敵勢力・ホムンクルスは基本、7人の男女によって構成された集団となっています。
では、主人公であるエドワードとアルフォンスと敵対しているホムンクルスたちの正体と目的とは一体どんなものだったのでしょうか。
以下、ホムンクルスが掲げる目的と、正体について解説していきます。
ホムンクルスの正体
ホムンクルスは錬金術によって生み出された人造人間であり、七つの大罪(傲慢・色欲・暴食・嫉妬・強欲・怠惰・憤怒)の名を冠した7人の存在を指します。
お父様と呼ばれる人物が生成する賢者の石を核としており、賢者の石の中に内包された人間の魂のストックが無くなるまでは、どのような損傷も回復する能力を持っているのが特徴です。
また、身体のどこかにウロボロスの印を持ち、特定のホムンクルス以外は自らの肉体と一体化した漆黒の衣服を身に纏っているのも特徴の1つと言えるでしょう。
生まれた時から豊富な知識と完成された肉体、そして冠した大罪に準じた性格を持っており、自らを人間より優れた存在として人間を見下しています。
ちなみに、ホムンクルスは基本的にお父様が賢者の石を用いて生み出すのですが、中には賢者の石を人間の肉体に注入する、という方法で生成された存在もいました。
人間の肉体を使って生み出したホムンクルスは人間ベースのホムンクルスと呼称され、作中では2人登場します。
旧作アニメ版におけるホムンクルスの正体
2003年に放送されたアニメ版鋼の錬金術師、通称旧アニメ版では、原作がまだ連載中だったために、ホムンクルスの存在に関しても大きな変更が加えられていました。
旧アニメ版におけるホムンクルスは、人体錬成の失敗によって生まれる、人間のなりそこないに対して、未完成の賢者の石である紅い石を食べさせることで誕生します。
紅い石を体内に投与したなりそこないは、ベースとなった人間と同じ姿となり、記憶の所持などは個体によって様々です。
旧作アニメの黒幕であったダンテはなりそこないに紅い石を食らわせることでホムンクルスを生み出し、使役していました。
弱点は肉体のベースとなった人間の遺骸であり、それらを目にしたり、体内に取り込んだりすると、大幅に弱体化してしまうのです。
ちなみに設定面に違う部分はありますが、驚異的な再生能力や紅い石を全て消費するか排出させれば消滅する点、それぞれ個性的な能力を所有しているところは原作と同様ですね。
ホムンクルスの目的
ホムンクルスたちの目的は、基本的に自身を生み出したお父様の計画を完遂することです。
お父様の目的はコミックス第26巻に掲載された104話「世界の中心」内で語られており、惑星を1つの生命体に見立てて、その心理の扉を開き、膨大な情報を手に入れ神になることでした。
そのために必要な賢者の石を確保するための錬成陣を作り、国の裏で糸を引くために、自らの不要な感情を抽出したホムンクルスを作り出したのです。
ホムンクルスの7人はそれぞれ与えられた感情の基で行動を進めていきますが、根本にはお父様への忠誠心に溢れています。
そのため、どんなに協調性に欠けていても、最終的にはお父様のために働くようになっていました。
尚、その中で唯一強欲の名を冠したグリードだけは、感情の性質上お父様のコントロールが効かない状態になり、反旗を翻すことになったのです。
旧作アニメ版におけるホムンクルスの目的
2003年に放送された旧アニメ版鋼の錬金術師では、ホムンクルス周りの設定変更に伴って、ホムンクルスの目的も違うものとされました。
その目的とは、人間になりたいという欲求を叶えることです。
人間のなりそこないから生まれたホムンクルスたちは、真の意味で人間になることを求めていたのでした。
そんな人間になりたいという欲求を持つホムンクルスたちを、黒幕であるダンテは「人間にしてやる」という口車に乗せて使役し、己の野望のために暗躍させていたのです。
鋼の錬金術師のホムンクルスの一覧と最後
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスたちは、お父様の中にあった感情を基にして生み出された7人の男女として登場しています。
では、ホムンクルスとして登場する人物たちの名前と特徴、そしてその最後について詳しく見ていきましょう。
ラスト
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの中で、最も初めに登場したのがラストです。
- 名前:ラスト
- 対応する大罪:色欲
- ウロボロスの刺青の位置:胸元
- 身長:170cm(ハイヒール込み)
- 固有能力:指先を鋭利な刃物に変化させる「最強の矛」
- 初登場:コミックス第1巻2話「命の代価」
- アニメ版声優:佐藤ゆうこ(久作アニメ版)/井上喜久子(古メタルアルケミスト版)
- 実写版俳優:松雪泰子
黒く長いウェーブの髪を持つ、豊満な肉体の妖艶な女性として描かれており、ホムンクルスの中でも漫画版では唯一の女性の外見を持っています。
登場当初は裏で暗躍することが多かったため、エルリック兄弟と対峙したのは遅れてコミックス第3巻12話「人間の定義」でした。
色欲の名を冠す通りの美貌を用いて、人間たちの中に取り入ることも得意であり、戦闘力と謀略能力に長けた描写が度々されたキャラクターです。
また、ホムンクルスの中では比較的協調性もあり、同胞であるグラトニーやエンヴィーと行動を共にするシーンも見られました。
ラストの最後
ラストが物語から退場するのは、コミックス第10巻39話「錯綜のセントラル」です。
お父様が定めた人柱候補であるロイ・マスタングを監視したり、情報を得る為にジャン・ハボックと交際するなどの暗躍をラストは続けていました。
しかしその最中、バリー・ザ・チョッパーやアルフォンスのせいで、軍の第三研究所の隠された実験室へ侵入を許してしまいます。
廃棄された実験室の中で、標的であるロイと、交際相手として取り入っていたハボックと出会ったラストは、彼らを排除するために矛を交えることになるのです。
激しい戦いの中でハボックとロイに致命傷を負わせ、襲い掛かってきたバリーにも手をかけたラストは、アルフォンスやりザ・ホークアイすらも始末しようとします。
その最中に自らの傷を炎で焼いて塞ぎ、再起したロイが駆け付け、奇襲を仕掛けて猛攻撃を食らわせ、ラストの命を消費させてしまうのです。
賢者の石の中に内包された魂を全て消費してしまったラストは、体内の賢者の石共々に塵となって死亡しました。
退場はホムンクルスたちの中では最も早く、読者も作者もその死を惜しんだほどです。
また、ラストと親しい関係にあったグラトニーは、ラストの死を強く悲しみ、ロイへの復讐心で暴走するという一面も見せました。
旧アニメ版におけるラストの正体と最後
2003年に放送された鋼の錬金術師のアニメ版は、原作漫画が連載中であったこともあり、途中から物語のストックがなくなったため、別の物語を歩んでいます。
2003年版アニメでは原作10巻まで進行しておらず、ラストの正体や結末に関しても全く違うものが用意されていました。
旧アニメ版におけるラストはホムンクルスとしては新参という存在で、生まれて7年しか経過していません。
また性格も冷徹で妖艶な原作版よりも人間味が強く、性格的にも甘いとされていました。
その正体は傷の男・スカーの兄が、病で失った恋人を再生しようとして生まれた存在、となっています。
そんな旧アニメ版ラストは終盤に人間であったころの記憶を思い出し、創造主であった女錬金術師・ダンテを裏切ると、エルリック兄弟側へ寝返るのです。
エルリック兄弟の行動に手を貸していたラストでしたが、錬金術を利用することができるホムンクルス・ラースの力によって体内の紅い石を全て排出してしまいます。
実は人間として死にたかったことを自覚したラストは、最後の最後に人間として死を迎えられることに喜び、安らかな顔で死を迎えたのです。
グラトニー
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの中で、ラスト同様に最初期に登場したのがグラトニーです。
- 名前:グラトニー
- 対応する大罪:暴食
- ウロボロスの刺青の位置:舌
- 身長:140cmくらい
- 固有能力:材料や質量を問わず、何でも食すことが可能/相手を呑み込むことで脱出不可能な空間に送り込むことができる
- 初登場:コミックス第1巻2話「命の代価」
- アニメ版声優:高戸靖広(久作アニメ版)/白鳥哲(古メタルアルケミスト版)
- 実写版俳優:内山信二
デフォルメの効いたずんぐりむっくりの体形に禿げ頭、円らな白目に大きな団子鼻という愛嬌のある顔つきを持つ男性型ホムンクルスです。
知能があまり高くなく、自発的な行動が得意ではないため、誰かに命令されることでしか動かず、よくラストやエンヴィーと行動を共にしていました。
固有能力に由来した空腹を常に訴えており、その食欲と能力、そして高い身体能力を前面に押し出した戦いが得意です。
その正体はお父様が作り出そうとした真理の扉の失敗作であり、いつもは隠されている腹の穴は真理の空間とは違う謎の空間に繋がっているという描写も存在しました。
グラトニーの最後
グラトニーが物語から退場するのは、コミックス第21巻87話「地下道の誓い」です。
ホムンクルスの同胞であるプライドと共にエルリック一行に夜襲を仕掛け、ダリウスとグリード、そしてエドワードと交戦します。
優れた嗅覚を活かして最初こそ有利に立ち回っていたのですが、援軍として現れたランファンと、グリードから一時的に肉体を返してもらったリンの連携によって追い詰められていきました。
また共に襲撃を行ったプライドも、フーが持ち込んだ閃光弾によって不利な状況に持ち込まれてしまうのです。
能力の弱点を削がれていく最中、プライドは何度も命を消費したというグラトニーを見つけ、自らの命を補いその能力を奪い取るために、影を用いて喰らってしまいました。
賢者の石ごと肉体の大半を失ったグラトニーは、喰われた恐怖と痛みを感じながら、ラストに助けを求めて塵となったのです。
旧アニメ版におけるグラトニーの正体と最後
2003年にアニメ化された、いわゆる旧アニメ版鋼の錬金術師におけるグラトニーは、性格や性質こそほとんど原作と変わりはありません。
しかし設定は変更されており、グラトニーは賢者の石を生成するための機能を備えた存在として登場しています。
グラトニーに食された人間の魂は、未練によってグラトニーの体内で賢者の石として生成されてしまうのです。
そんなグラトニーはアニメ版の物語終盤にラストを失ったことで絶望の淵に立たされ、何の行動もできないほどに追い詰められてしまいます。
役に立たなくなってしまったグラトニーにしびれを切らしたダンテの手によって精神を奪われ、暴走状態に陥りました。
暴走状態の中でスカーと交戦し、顎を吹き飛ばされたことで敗れ、アニメ版本編からは退場するのですが、その後主人であるはずのダンテを食したことが判明します。
旧アニメ版のその後を描いた映画「シャンバラを征く者」にて再登場を果たしたグラトニーは、既に暴食の業に従うだけの化け物と化していました。
ダンテの拠点に現れたアルフォンスとラースと戦闘になるものの、アルフォンスがラースとグラトニーを材料にして「門」を開くために利用され、ラースと共に消滅します。
エンヴィー
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの中で、ラストやグラトニーの次に登場したのがエンヴィーです。
- 名前:エンヴィー
- 対応する大罪:嫉妬
- ウロボロスの刺青の位置:左足の太腿
- 身長:154cmくらい
- 固有能力:自らの肉体を自在に変形することができる
- 初登場:コミックス第2巻6話「破壊の右手」
- アニメ版声優:山口真弓(久作アニメ版)/高山みなみ(古メタルアルケミスト版)
- 実写版俳優:本郷奏多
細身のすらりとした肉体に中性的な顔つきを持ち、公式で男女の判別はされていない設定のホムンクルスです。
行動を共にすることが多いラストに仲間の中で最もえげつないと称される、残忍かつ狡猾な性格の持ち主だと描かれました。
自らの肉体を自在に変形させることができるという能力を持ち、その能力で爬虫類のような正体を隠しています。
また、他人の肉体を乗っ取ったり、吸収することで己の肉体を修復するなどの能力も見せました。
エンヴィーの最後
エンヴィーが物語から退場するのは、コミックス第23巻95話「烈火の先に」です。
中央でロイ、リザらと出会ったエンヴィーは、かつて己がロイの同僚であったマース・ヒューズを殺したことを明かします。
真相を知ってしまったロイはエンヴィーを苛烈に追い詰め、無力な本来の姿を引きずり出すと、復讐心のままにエンヴィーを殺害しようとしました。
しかしエドワードやスカー、リザの言葉によって思いとどまり、憎しみを糧に錬金術を振るうことを止めるのです。
そんな中でエンヴィーはエドワードやロイ、リザやスカーを同士討ちさせようと口を回しますが、復讐心を乗り越えた4人をたきつけることはできません。
更にエドワードにエンヴィーの底にあった嫉妬心を憐みの目と共に見抜かれ、理解されてしまったことを受けて満足を覚えてしまった末、自ら賢者の石を肉体から剥がして死亡するのでした。
エドワードのようなガキに自らを理解された屈辱もあったものの、理解されたことで嫉妬心が解消されてしまい、密かな喜びのままに自害したのです。
旧アニメ版におけるエンヴィーの正体と最後
2003年に放送された旧アニメ版では、最古参のホムンクルスという設定になっており、エドワードとアルフォンスの父である、ホーエンハイム・エルリックの息子であるとされました。
出生の関係からエルリック兄弟に対して多大な嫉妬心を抱いている他、自分を捨てたホーエンハイムに対しても強い憎しみを抱いています。
作中終盤では憎い異母兄弟であるエドワードの殺害に成功するものの、エドワードは最終話にて賢者の石となったアルフォンスを代償として復活するのです。
そして復活したエドワードにホーエンハイムが門の外に飛ばされたことを教えられると、変身能力を代価にして本来の姿である巨大な竜のような姿に変貌してホーエンハイムを追っていきます。
その後劇場版の「シャンバラを征く者」にて門の外の世界に向かったエドワードと竜の姿のまま再び遭遇し、憎たらしい相手を葬ろうと襲い掛かりました。
しかし劇場版にて登場したトゥーレ教会の放ったロンギヌスの槍に捕縛された後、ホーエンハイムが再び門を開くための対価として利用され、ホーエンハイムと共に消滅したのです。
グリード
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの中で、非常に異質な存在と言えるのがグリードです。
- 名前:グリード
- 対応する大罪:強欲
- ウロボロスの刺青の位置:左手の甲
- 身長:181cmくらい(初代グリード)/170cmくらい(2台目グリード)
- 固有能力:体内の炭素を表皮で硬貨させる「最強の盾」
- 初登場:コミックス第6巻25話「師弟のけじめ」
- アニメ版声優:諏訪部順一(久作アニメ版)/中村悠一(古メタルアルケミスト版)
- 実写版俳優:渡邊圭祐
強欲の名の通りに欲望に忠実な性質を持つホムンクルスであり、この世のあらゆるものを欲しがる性格をしています。
物語開始100年前にお父様から離反して自由に生きていたものの、キング・ブラッドレイことラースによって拘束され、お父様の基へ連れ戻されてしまいました。
その後賢者の石となったグリードは、お父様の前に現れたリン・ヤオへと注入され、新たな肉体を得て再び物語に登場します。
肉体の持ち主であったリンとは対話の末に奇妙な友情を築いており、場合によって肉体の主導権を切り替えるような形で共生していました。
グリードの最後
グリードの1度目の死はコミックス第8巻31話「己の尾を噛む蛇」で描かれています。
ラースによって連れ戻されたグリードはお父様の前に引き渡され、再び自分の計画に与せよと命じられますが、グリードはそれを拒絶しました。
結果グリードはその身を賢者の石に還元されて呑み込まれ、消滅するのでした。
2度目の死はコミックス第27巻108話「旅路の果て」です。
リンと共生状態となったグリードは、エルリック一行と共にお父様と対峙した際、お父様によって体内の賢者の石を奪われ、リンから分離して吸収されてしまいます。
しかしグリードは遅めの反抗期と称してお父様の肉体を己の能力でボロ炭として錬成しますが、とうとうお父様に魂を喰い尽くされて消滅しました。
消滅の最中、本当に欲しかったものである仲間を手に入れたと実感したグリードは、魂の友と認めたリンやエドワードに別れを告げ、満足そうに散っていくのです。
旧アニメ版におけるグリードの正体と最後
2003年に放送された旧アニメ版では初代グリードの姿しか出ず、その正体はかつてダンテに対して好意を抱いていた男性というものでした。
原作同様に自由奔放な性格の持ち主で、ダンテに従順ではなかったホムンクルスとして第五研究所内に封印されていたのですが、脱走してしまいます。
その後はゾルフ・J・キンブリーや生きていたショウ・タッカー、キメラとなっていた兵士たちを引き連れて酒場・デビルズネストに潜伏するのです。
しかしキンブリーの裏切りに遭って部下の大半を失った末、無意識にダンテの基へ向かった際、旧アニメ版ホムンクルスの弱点となる遺骨を使用されてしまいました。
結果大幅に弱体化された状態で出会ったエドワードと交戦した末に死亡するのです。
グリードを殺したことは、エドワードの中で殺人を犯したという大きなトラウマとなり、後に影響を与えるのでした。
ラース
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの中で、衝撃の正体を携えて登場したのがラースです。
- 名前:ラース
- 対応する大罪:憤怒
- ウロボロスの刺青の位置:左眼
- 身長:175cmくらい
- 固有能力:銃弾の軌道すら見切ることが可能な動体視力「最強の眼」
- 初登場:コミックス第4巻15話「鋼のこころ」
- アニメ版声優:柴田秀勝
- 実写版俳優:舘ひろし
軍事国家アメストリスの最高権力者とも言える人物、キング・ブラッドレイの正体となっています。
お父様によってアメストリスの権力を掌握するために育てられた元人間であり、賢者の石を注入されたことでホムンクルスとなった人間ベースのホムンクルスです。
しかし人間の肉体を持っているために老化は発生する上、賢者の石の中に内包された魂たちを肉体の支配権を奪い合った末に全員殺害しているため、驚異的な再生能力などもありません。
ホムンクルスたちが持つような強靭な肉体も持ち合わせていないにしても、鍛え上げられた肉体から放たれる正確無比な剣術は、作中でも最強レベルと言っても過言ではないでしょう。
ラースの最後
ラースことキング・ブラッドレイが物語から退場するのは、コミックス第26巻105話「神の御座」です。
スカーと対峙し、死闘を演じるラースは、死に瀕していく中で戦いへの渇望と喜び、そして満足感を感じていました。
互いに深手を負いながら死力を尽くして戦う中で、スカーはとうとうラースの両腕を破壊することに成功します。
両腕を失っても口に愛用の剣を加えてスカーを攻撃していたものの、ラースの肉体の損傷は致命的な物であり、仰向けで倒れて動けなくなってしまうのです。
そんな最中に現れたのが、ラースに己の腕と己の祖父を奪われたランファンでした。
ランファンの言い残すことはないか、という問いかけにも毅然とした態度で無いと言い放ち、妻への遺言についても、あれと私の間に余計な言葉はいらぬときっぱり跳ねのけます。
そして急速に老化していくようにして、空を見上げながら自らの最後を、やりごたえのある良い人生であったと振り返りつつ、息絶えるのでありました。
旧アニメ版におけるラースの正体と最後
2003年に放送された旧アニメ版鋼の錬金術師では、シナリオの大幅変更や原作ストックの枯渇という影響で、ラースが登場するものの完全な別人となっていました。
2003年放送の旧アニメ版におけるラースはキング・ブラッドレイではなく、髪の長い小柄な少年(CV:水樹奈々)です。
ベースとなった人間は、エルリック兄弟の師匠であるイズミ・カーティスが流産してしまった息子という設定でした。
イズミが人体錬成を行った際に真理の扉の向こうに送られて育ち、同じように真理の扉へ送られたエドワードの手足を獲得して取り込み、錬金術を使えるようになったという経歴の持ち主です。
そのため、無機物を取り込むというホムンクルスの特徴を持ちつつ、錬金術も扱える存在として登場しています。
そんなラースの最後は、アニメ第1作目の劇場版「シャンバラを征く者」で描かれました。
アルフォンス・エルリックと共に行動をしていたラースは、化け物に変貌していたかつての同胞・グラトニーと交戦することになります。
その際にアルフォンスが門を開いて、別の世界へ行ってしまったエドワードを連れ戻すための手助けをせんと、グラトニーと己の身体を利用し、門を開かせたのです。
門が開いた先には己を産み落とした母、イズミ・カーティスがおり、イズミに抱きしめられてラースは消滅するのでした。
スロウス
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの1人がスロウスです。
- 名前:スロウス
- 対応する大罪:怠惰
- ウロボロスの刺青の位置:右肩の後ろ
- 身長:260cmくらい
- 固有能力:驚異的な瞬発力を駆使し、人間では目視不可能なほどのスピードを出せる
- 初登場:コミックス第8巻31話「己の尾を噛む蛇」
- アニメ版声優:立木文彦
- 実写版俳優:鈴木智則(声)
国家錬成陣のためのトンネルを掘り続けることを命じられたホムンクルスであり、100年以上も仕事を続けていた存在です。
怠惰の名を冠する通りに面倒くさがりで、伸び放題の髪の毛や遅い動作からもそれが伺える他、度々面倒くさいという言葉を吐いています。
戦闘に関しても面倒なためにほとんど本気を出すことはないのですが、一度本気を出せば、強靭な肉体と怪力、そして超高速移動能力を駆使して戦闘を進めていくのです。
残像も残さないほどの速さで一瞬のうちに動けるのですが、速すぎて制御不可能である他、予備動作などで見切ることはできる、という弱点を持っています。
スロウスの最後
スロウスが物語から退場するのは、コミックス第24巻96話「二人の女傑」でした。
オリヴィエ・ミラ・アームストロングを始末せんと中央に乗り込んだスロウスは、オリヴィエとその弟、アレックス・ルイ・アームストロングと交戦します。
最初こそ巨躯と高速移動を駆使した戦いで圧倒していくものの、速すぎて制御ができないという弱点を突いて形勢逆転を許してしまいました。
更に増援として現れたイズミ・カーティスとシグ・カーティス、そしてオリヴィエによって焚きつけられた兵士たちによる戦闘の末に、徐々に命を削り取られていきます。
最後はシグとアレックスの親友コンビに投げ飛ばされ、錬成した棘に突き刺さって最後の命を消費し、塵となって消えていくのでした。
尚、最後の最後まで面倒くさがりであり、死の意味を考えてみるものの、考えることすら面倒くさいと嘯いて消えています。
旧アニメ版におけるスロウスの正体と最後
2003年に放送された旧アニメ版鋼の錬金術師では、ラースと同じく設定変更や原作枯渇の影響を受け、全く別のキャラクターとして登場していました。
2003年の旧アニメ版ではスロウスは、身体を液状化するという能力を持つ女性(CV:鷹森淑乃)で、その正体はエルリック兄弟の母であるトリシャ・エルリックを素体とした存在です。
ラースを一度液状の体内に匿ったことでラースに母として慕われ、以降行動を共にするようになりました。
スロウスの最後はアニメの終盤で描かれており、エドワードとラストの働きによって紅い石を排出させられた結果、命のストックを1にまで減らされてしまいます。
しかし肉体を液状に変化させるという能力のせいで決定打を与えられない中で、スロウスとエドワードの間にラースが乱入してきました。
ラースはその体内にエドワードから奪ったスロウスの遺骸を取り込んでいたことを忘れ、スロウスと合体してしまったせいで、スロウスは大幅に弱体化するのです。
その隙をついてエドワードがスロウスの体内の水分をエタノールに錬成し、蒸発して消滅するという最後を辿るのでした。
プライド
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスの中で、リーダー格として扱われる最初の存在がプライドです。
- 名前:プライド
- 対応する大罪:傲慢
- ウロボロスの刺青の位置:なし
- 身長:110cmくらい
- 固有能力:己の身体の一部である影を操る力
- 初登場:コミックス第8巻31話「己の尾を噛む蛇」
- アニメ版声優:三瓶由布子
- 実写版俳優:寺田心
アメストリスの国家元首キング・ブラッドレイの養子、セリム・ブラッドレイとして登場し、正体を隠した状態で屈託のない幼い少年のように振舞っていました。
プライドとしての正体を現したのは第18巻70話「始まりの人造人間」で、登場が最も遅かったホムンクルスと言ってもいいでしょう。
尚、セリムの姿はただの容器であり、本体は影のようなものに目玉や口を持つという不定形の姿で、強度や形状を自由に変化させることができました。
ただしその性質は影にほど近く、影との境界線が曖昧になってしまう完全な暗闇の中や、影とそうでない部分が分かれてしまう程の強い光を受けた場合は能力を行使できないという弱点を持ちます。
プライドの最後
プライドが物語から退場するのは、コミックス第26巻106話「傲慢の深淵」です。
ロイ・マスタングの真理の扉を開けた影響で肉体にガタがきていたプライドは、次なる容器としてエドワードを狙います。
そんな最中にエドワードはプライドに、何故お父様に従うのかという問いを投げ、プライドはそれに対して、生みの親に従うのは当然だと返しました。
思考を停止したようにお父様に従い続けるプライドの言い分を一蹴したエドワードを、プライドは激昂しつつ吸収しようとします。
しかしかつて吸収したゾルフ・J・キンブリーが突如プライドの中で吸収行為を妨害し、その隙をついてエドワードが自らの肉体を賢者の石としてプライドの中へ侵入するのです。
大量の魂の中にあったプライドを見つけ出したエドワードはプライドの魂を鷲掴みにすると、握りつぶすようにして砕くのでした。
セリムの肉体は塵となってしまい、エドワードの機械鎧の手の中には、胎児にまで退化してしまったプライドの本体が残されたのです。
胎児となったために生き残りはしましたが、プライドとしての記憶や人格は完全に消滅してしまっていることが伺えます。
尚、最終決戦後に無力なプライドは再びブラッドレイ夫人の基へ預けられ、セリム・ブラッドレイとして新たな生を歩み出しました。
旧アニメ版におけるプライドの正体と最後
2003年に放送された旧アニメ版鋼の錬金術師では、ラースやスロウス同様にシナリオ変更と原作枯渇の影響を受け、設定を大幅に変更されて登場しました。
旧アニメ版におけるプライドは、なんと原作ではラースとなっていたキング・ブラッドレイとなっています。
原作と背負った大罪が違うために、旧アニメ版のブラッドレイは非常に傲慢な性格の持ち主となっており、己の妻や養子に対する愛情はなく、創造主であるダンテにすら蔑みの感情を向けていました。
そんなプライドの最後はアニメ終盤に描かれており、こちらではロイ・マスタングとの一騎打ちで進行していきます。
原作同様に優れた動体視力を駆使してロイの炎を回避し、始終有利に立ち回っていたものの、突如何も知らないセリムが、プライドにあるものを渡すために現れます。
それはプライドが隠していた自分のベースとなった人間の遺骨であり、隠していた弱点を持ち出してきたセリムを思わず縊り殺してしまうのです。
その頭蓋骨をロイに奪われて動けなくなったプライドは、ロイの炎の錬金術によって、紅い石の魂がなくなるまで焼き殺されてしまったのでした。
鋼の錬金術師のホムンクルスの目的と正体、メンバー一覧とその最後のまとめ
- ホムンクルスは原作だとお父様が、旧アニメ版だと黒幕のダンテという人物が賢者の石を用いて作り出した人造人間
- ホムンクルスの目的は、原作だとお父様の目的を完遂させることで、旧アニメ版では完全な人間になること
- ホムンクルスと呼ばれる一団は7人の男女によって構成されている
- ホムンクルスのメンバーは七つの大罪の名を冠しており、性格も大罪に準ずる部分が存在する
- ホムンクルスの初登場はコミックス第1巻2話「命の代価」で、最後の1人の退場はコミックス第27巻108話「旅路の果て」
鋼の錬金術師に登場するホムンクルスは7人の男女によって構成された人造人間の一団で、作中に姿を現すのはコミックス第1巻2話「命の代価」からとなっています。
原作とフルメタルアルケミスト版ではお父様の計画を完遂させることが目的となっており、協調性はあまりなくとも一部を除いて同じ方向を見て暗躍していました。
一方2003年に放送された旧アニメ版では人間になりたいという目的を黒幕に利用される形で使役されていたため、最終的には仲間割れなども起こしてしまっています。
尚、鋼の錬金術師原作において、最初に死亡したのはラスト、最後に死亡したのはグリードです。
旧アニメ版では最初に死亡したのがグリード、最後に死亡したのがラースとエンヴィーとなっていました。
