アンナの兄ヘンリーは、セネット侯爵家の中で唯一容姿や魔法が異なる妹を可愛がる優しい兄でしたが、チェンジリング発覚後はアンナへ抑えきれない感情をぶつけています。
では、なぜヘンリーはアンナに辛く当たったのか、また、その後どのような心境の変化があったのでしょう。
そこで今回は、
- ヘンリーのプロフィール
- ヘンリーとアンナの関係
- ヘンリーの後悔
- ヘンリーはアンナの結婚式に出席
- ヘンリーのその後
など、ヘンリーについて紹介していきたいと思います。
ヘンリーのプロフィール
ヘンリーは名門上流貴族セネット侯爵家の嫡男です。
魔法の才能と容姿の良さを引き継いだ金髪碧眼と媚眼秋波の青年で、セネット侯爵家の中では優しい目鼻立ちが特徴になります。
セネット侯爵家は特別な「癒しの魔法」を扱う一族であり、ヘンリーも怪我や病気を治す癒しの魔法が得意です。
ヘンリーとアンナの関係
アンナは生まれた時からセネット侯爵家とは違った容姿だった為、両親は世間体を気にしてアンナが13歳を迎える前には養子に出そうと考えていました。
しかし、ヘンリーはアンナにセネット家の血を感じられなくともたった一人の大切な妹を養子に出すなんて非道な真似は出来ないと主張し、両親の意見に反対したのです。
それからというものアンナは自分を大切にしてくれるヘンリーに付いて回るようになりました。
ヘンリーは家族の中で唯一アンナを可愛がっており、アンナが婚約者であるエドモンドに手料理を振る舞う為にキッチンに立ち切り指に傷を負った際には血相を変えて飛び込んでくると、アンナにナイフの使用禁止、料理を教えていたサラを厳しく叱責しようとする等、少々暴走する一面を見せています。
しかし、アンナの説得には弱い一面もある為、大抵はアンナの主張に折れる事が多いようです。
なお、アンナとエドモンドの初顔合わせの場でエドモンドが無礼な一言を言い放った際は、その場でこそ何も咎めなかったもののルーカス家の跡取りが粗暴な少年だと知るなり、可愛い妹をこれ以上泣かせない為に裏でエドモンドに釘を刺そうとしていましたが、エドモンドがルーカス伯爵と話している姿を偶然立ち聞きし、アンナを守ると宣言したエドモンドにならばアンナを任せられると感じ結局何も言わずに踵を返す姿が描かれています。
ヘンリーとアンナの約束
アンナが幼い頃にルウルウ風邪に罹った際、アンナは聖女ならばルウルウ風邪に罹らないという使用人達の会話を聞き自分は将来聖女になれない、また聖女候補じゃないから両親が見舞いに来てくれないのではないかと不安に押し潰されていました。
そんな時、ヘンリーだけはアンナを心配して見舞いに訪れると、両親は仕事帰りの馬車が遅れているだけだと嘘を吐き、代わりに自分がずっと側にいると約束するのです。
そして、ルウルウ風邪の薬が届くまでの間、癒しの魔法を使ってアンナの症状を和らげるのでした。
また、アンナが「ずっと側にいてね、兄様…」と呟くと、アンナがお嫁に行くまではずっと一緒だと告げて寝付かせています。
ヘンリーはチェンジリング発覚時にアンナに辛く当たる
アンナのマンチェス学院の合格発表当日、ヘンリーを含めた侯爵家の家族は青い髪の妖精から「アンナの合格発表を見に行けば面白いことがある」というお告げの夢を見る事となり、侯爵家としては珍しく家族全員でアンナの合格発表を見に行きました。
そして、合格発表の場に容姿端麗で金髪碧眼というまさしくセネット侯爵家の血を彷彿させる少女アネットが佇んでいるのを見つけたセネット侯爵家は思わず目を惹かれていると、ヘンリーはアンナが小さく「…アネット」と呟いたのを見逃しません。
両親がアネットを見つけて涙ぐみながら駆け寄るより一拍置いてヘンリーもアネットの下へ駆け寄ると、セネット侯爵家はアンナをその場に置いて何処かへ立ち去っていきます。
その後、アンナが小さな希望を抱いてその場で立ち尽くしたままヘンリーを待っていると、空が暗くなった頃にヘンリーは従者を連れて馬車で戻ってきますが、アンナが開口一番「兄様」と呼べば「私は君の兄ではないよ」と冷たく言い放つのでした。
更に、アンナがアネットの名前を呟いた事からアンナが以前から自分が侯爵家の人間ではない事を知っていた、加えてどうしてその事実を話してくれなかったのかを詰め寄ると、アンナがもっと早く告白していれば本当の妹はこんなにも長い間惨めな思いをせずに済んだと強く当たるのです。
とは言え、ヘンリーもチェンジリングについては嘘だと信じたかった、アンナが自分を騙していたなんて考えたくなかったそうで、本当は今朝の夢の妖精からアンナが一年も前からチェンジリングを知っており自分可愛さにずっと隠蔽していた事を聞かされていましたが、現実にアンナの反応を見るまでは否定したかったと言います。
それ故にアンナがアネットの名前を呟いた際に酷く裏切られた気持ちになりアンナに対して嫌悪を覚えたのです。
その為、アンナのせいで本当の妹は一年も余計に苦労し学院の試験も受けなければならなかった、困窮した生活で日銭を稼ぐ日々を強いられたと考えており、アンナがもっと早く告白していれば一年早く救い出せたと主張し、アンナに向けて「恥を知れ!」と罵るのでした。
そして最後には「お前みたいのが妹で肩身が狭かったんだ…」と訣別すると、後の事は従者に一任しアンナを庶民の本当の家族の所へ届けさせます。
ヘンリーの後悔
アンナを追放し本当の妹であるアネットが侯爵家に戻ってきましたが、ヘンリーはアンナの時のようにアネットに優しく接しています。
貴族になったばかりのアネットは環境の変化に疲弊しており、育ての家族そしてアンナの事を心配していましたが、ヘンリーはそれはアネットが気にする必要はないと切り捨てます。
アネットは14年も一緒に暮らした家族が心配である気持ちはヘンリーも同じ筈だと訴えますが、ヘンリーはアネットの家族はセネット侯爵家だけであり、アンナに関しては不自由のない援助を施したしマンチェス学院で見かける事もあるだろうから心配はないと返しました。
そんなヘンリーの対応にアネットは「ずいぶん冷たいんですね。10年以上も一緒に暮らした妹なんでしょう?」と零しますが、ヘンリーはアネットに聞こえない声量で「君に何が分かる…」と怒気を孕ませるのです。
そして、いいから早く寝るようにとヘンリーが部屋を出ようとした所、アネットはそうやってヘンリーはアンナの話も聞かなかったのではないかと詰め寄ります。
アネットは侯爵家に来てからというものアンナの居場所が無い事を知り居心地の悪さを感じており、家の人間は優しく接してくれるが何処かよそよそしさが隔てている事から、家族の中に自分の居場所を求めていたアンナは自分と一緒の想いだった筈だと訴えるのでした。
しかし、アネットに対してヘンリーの接し方だけは自然だった為、アネットにはヘンリーだけがこれまでアンナに家族として接してきたと容易に想像出来たのです。
アネットはそんなヘンリーがなぜアンナの追放を許したのかを責め立てますが、ヘンリーはアンナが裏切ったのは紛れもない事実であり、アンナが生まれた時から侯爵家に彼女の居場所が無いのでアンナが見捨てられないように自分がアンナの居場所になる事を決めていたにも関わらず、最後にはアンナ自ら裏切って台無しにしたのだと反論します。
アンナが生まれて14年、ヘンリーは両親を説得しアンナと一緒にいる為に頑張ってきましたが、アンナがチェンジリングを知った段階で出生の経緯を話してくれればどうにか出来た筈だと苦悩しました。
そんなヘンリーに向けてアネットは「本当に彼女は何も言わなかったの?ヘンリー兄さんは無意識に避けていたんじゃないの?」と問い詰めると、ヘンリーはアンナがこれまでに何度か何かを切り出そうとする素振りを見せていた事を思い出すのです。
何か思い詰めているようなアンナの態度を察したヘンリーは、これまで大切に可愛がってきた妹からある日突然「私は本当にこの家の娘なの?」と言われれば培ってきた関係の全てが崩れ去る不安から無意識の内に避けていたのだと突き付けられると、アンナを追い詰めたのは自分だったのだと気付き涙を流して後悔するのでした。
ヘンリーはアンナの為に動く
マンチェス学院の入学が始まって一週間が経過するもアンナは学院に通っていないという事実を知ったヘンリーは、アネットと共に学院の応接室にて教員に詰め寄ります。
しかし、学院に合格していながらも通っていないとなればアンナは入学を辞退するつもりではないかと教員に言われると、せっかく試験に合格したのに入学辞退はおかしい、入学金も支払っている筈だとヘンリーはアンナを心配するばかりかイラついた様子で反論しました。
そんなヘンリーを諭すようにアネットは庶民の生活事情について説明すると、ヘンリーは庶民の生活が困窮しているという現状を知ってアンナが勉学よりも生活を優先した事に納得します。
そして、庶民の生活に詳しいアネットに対して庶民の生活の一助となるアイデアを求めると、アネットは庶民の暮らしを守る法律と貴族優遇の政策の見直しを提案しますが、流石に国自体を動かす改正は難しいと顔を歪ませました。
とは言え、アンナに貴族たる者の責務と言われればヘンリーは意見は耳に入れつつ自分に出来る事を考えます。
また、アンナに「それが難しいならせめて兄さんはアンナの味方でいてあげて」と言われた際には照れくさそうに「…今もそのつもりで学院に来ているのだがね…」とアンナの味方である事を包み隠さず、陰ながらアンナの手助けになる方法を探し始めるのでした。
ただし、特定の庶民に必要以上に肩入れすれば他の貴族ましてや不利益に通じる相手がその庶民に危害を加える可能性があるのでヘンリーはアンナに接触する気はありません。
その後も、庶民であるアンナが未だエドモンドと親しくしている事を知った侯爵家の両親が何か手を打つ前に、それとなくアネットを動かしてアンナを助けています。
ヘンリーはルウルウ風邪の一件で動く
ルウルウ風邪流行にガルマダール子爵が関わっている事を突き止めたアンナ、アネット、エドモンド達でしたが、相手が貴族ある事から証拠を掴む為に作戦を講じていました。
そして、ある程度の作戦を練った後、アネットは不意に「後は兄さまをこの計画に引きずり込むだけだわ」と零すのです。
更にアネットは「大丈夫よ、アンナが関わってるし」と付け足すと、アンナは何故自分が関わっていると大丈夫なのか理解出来ていませんでしたが、アンナにはヘンリーが動けば計画は実行出来、逆にヘンリーが居なければ失敗する未来しか描けない程確かな信頼を寄せていました。
その後、計画に賛同したヘンリーは従者のバレットを向かわせており、作戦実行に必要なマジック鞄(セネット侯爵家の家宝)を提供する他、無鉄砲なアンナに向けて「手助けしようとして問題を大きくしないように」と言伝を頼んでいます。
また、ガルマダール子爵家に事前にスパイを忍ばせる等して、方々で手助けをしていました。
ヘンリーはアンナの結婚式に出席
アンナとエドモンドの結婚式は身内だけで執り行われましたが、ヘンリーは従者のバレットと出席してアンナを驚かせました。
一応、元の兄という事ではなく石炭列車の共同出資者という立場で出席しているようですが本当の所は分かりません。
セネット侯爵家を追放されて以来の再会となりますが、アンナが形式的にヘンリーに挨拶をするとヘンリーは「アンナさん、結婚おめでとう」と祝福し、これからもエドモンドの仕事仲間の一人として話す機会もあると伝えました。
また、従業員がまだ少ない為、アンナ自身もエドモンドの手伝いで一緒に働く旨を伝えるとヘンリーは「それは楽しみだ。これからもよろしく頼むよ」と返しており、ヘンリーはアンナの幸せな姿に満足しているようです。
ヘンリーは魔導列車の普及に尽力
ヘンリーは魔導列車に興味があり、かねてからエドモンドと魔導列車の普及について話し合っていました。
しかし、当時はルーカス家当主が首を縦に振らなかった為に、ヘンリーは父の代で実現出来なければ将来的に自分達の手で魔導列車の普及を実現させようとエドモンドと約束するまでに留まっていたのです。
そして、作中終盤のアンナとエドモンドの結婚後、チェンジリングの問題やアンナとアネットの問題が解決した頃、セネット侯爵家・ルーカス伯爵家・モンルート男爵家で共同出資し石炭列車の会社を設立し普及に向けて本格的に動き出しました。
ヘンリーについてのまとめ
- ヘンリーは名門上流貴族セネット侯爵家の嫡男でアンナの兄
- ヘンリーは、たった一人の大切な妹を養子に出すなんて非道な真似は出来ないと主張しアンナを守って来た
- ヘンリーはチェンジリング発覚後、アンナに裏切られた気持ちから「私は君の兄ではないよ」と冷たく言い放ち追放した
- ヘンリーはアネットに諭されると、アンナを追い詰めたのは自分だったのだと気付き涙を流して後悔する
- ヘンリーは貴族と庶民の立場上必要以上に肩入れすればアンナ達に危害が及ぶと考え、アンナとは接触せず方々からアンナを手助けする
- ヘンリーはアンナとエドモンドの結婚式に出席しアンナを驚かせる
- ヘンリーはその後、セネット侯爵家・ルーカス伯爵家・モンルート男爵家で共同出資し石炭列車の会社を設立
ヘンリーは妹のアンナを可愛がっていた為に、チェンジリング発覚後は何も話してくれなかったアンナに裏切られた気持ちから衝動的に辛く当たってしまいました。
しかし、アネットに諭された事で本当は自分がアンナと築いてきた関係を崩壊させるのが嫌でアンナの話を聞こうとせず、アンナを追い詰めたのだと思い知らされると酷い後悔に苛まれる事となり、以降は貴族と庶民の関係を維持しつつ陰ながらアンナの手助けをしています。
アンナとエドモンドの結婚式で漸く再会を果たした元兄妹ですが、互いに離れていても信頼はそのままであった為、形式的には距離を感じても二人の関係や信頼はそのままか、或いはヘンリーが一皮剥けた事で一層妹の幸せを願うようになったようですね。