漫画は読んでいて楽しい、愉快になる作品だけではありません。
中には重いテーマを題材にしているものもあり、そのような思いテーマでも救いがあれば読んでいて納得もできるのですが、作品の中身も壮絶、結末も壮絶、といった読んでいて救いが全く読み終わった後憂鬱な気分だけが残る作品もあります。
作者はなぜ、作中や結末に救いを描かなかったのか、今回はジャンル分けをして救いのない漫画を集めてみました。
どうしてそんな設定に?世界観そのものが救いのない漫画
まずは設定そのものに救いがなく、どうあがいても幸せな結論にならない漫画から。
ぼくらの
名前も顔も知らない12人の子供たちが夏休みある宿に集まり、そこで出会った一人の大人に君たちにこの世界を救って欲しいと言われる。一回しか手本を見せてもらえず、あれは夢だったのではないか?感じたが、我先にとパイロットになり訳のどこの誰とも分からない倒していきます。
この作品の救いを感じないポイントは、ロボットを操縦するのは全員ではなく、一回の敵に対し戦えるのはたっち一人。それも勝利してもロボットの稼働は操縦者の命なので必ず死がやってくるという点。
しかもロボットを操縦できるのは子供しかできず、また命が削られると分かっていてもロボットに乗らなければその時点で敗北決定。世界が崩壊する。戦ううちに敵側も同じ人だと知りながら戦わなければならず、それでも容赦なく次から次と襲ってくる敵。
この作品は1話ごとに子供たちの生活や心情が描かれていて、一度乗れば買っても負けても死ぬと分かっているため、搭乗を拒否する者もいるが、それを知りながらの戦闘を繰り返し、死も繰り返す。そして物語に登場する人物が、裏切り者か味方か、終わり方もハッピーエンドとはいかないものの、それまでの流れや登場人物を想うと引き込まれながら、同時にこれ以上救いがない漫画はないのではないか、と思ってしまう作品です。
未来日記
未来日記は携帯を使って未来を予見し殺し合いをするサバイバルゲーム、これだけだと楽しそうに聞こえますが未来に着はその内容が辛かった。
救いがないのは、若者が否応なく殺し合いをさせられるところ。主人公は現在も未来も悲惨で、ヒロインとともにバットエンドを避けようと試みますが敵が手強く、サバイバルを超えた殺人ゲームは悲惨そのもの。バトル要素は楽しめますが、悲観的な雰囲気があり、一人で見ていると終始嫌な汗をかいて生きている心地がしません。未来日記はバトルを通して成長要素があるので見ていて飽きはきませんが、いくら戦っても仲間と分かり合うことができず読んでいて憂鬱な気分に包まれました。
アホリズム
「入学の条件は空に浮かぶ島が見えること」そんな一風変わった楢鹿高等学校は成績に関係なく卒業したらだけ、その後の地位や名誉が約束される特別な学校。
主人公の六道黄葉は空の島が見えるので新しい学校で過去の自分を変えるべく楢鹿高校に入学するが、「これからそこに一文字、漢字を書け。各々がこれから始まる戦いに最も相応しく必要だと思う漢字を一つ…な」早々、担任教師に意味もわからずに書けと言われた漢字一文字が生徒たちの身に刻まれ、儀式が完了するのと同時に、学校中に謎の怪物達が溢れ蝕がはじまる。
生徒を襲い、殺す怪物達。学校の敷地から逃げることは出来ず、身に刻まれた漢字に象徴される能力。六道の書いた漢字は変。姿を変える能力を武器に、仲間と協力しつつ、地獄のような学校で島とは蝕とはと楢鹿高校の謎を紐解いていく作品です。
1巻から多くの人が死んでいきもう最初から救いがない展開で、最終巻はおそらく打ち切りなのか伏線回収がされないまま終わってしまったのが残念。六道は一度同級生に盗を使われ心臓をとられ一度死んでおり、復讐と自分のために盗んだ本人の心臓をとり自分の心臓としたことから地獄に落ちるように終わりました。完結してもバットエンド、救いが一切ない漫画です。
ブラッドハーレーの馬車
遠い昔なのか、架空の時代なのか、とある時代のとある国のお話。
貴族・ブラッドハーレー家の経営する歌劇団は、全国の孤児院から養女になった少女たちで構成されており、そのため孤児院で暮らす少女たちは、いつかブラッドハーレー家の馬車が迎えに来て、その歌劇団に入ることを夢みていますが、実際は、歌劇団に入れる少女はほとんど存在せず、かわりにブラッドハーレーの馬車で刑務所に連れていかることに。
話のキモ、そして救いがないポイントはここで、歌劇団に入り舞台に立つことを夢見て胸を高ぶらせて馬車に乗った少女は、服役中の男たちに乱暴をされるのです。家はブラッドハーレーは、刑務所でかつて起きたような暴動が起きないように、一年に一度、全国の孤児院から少女たちを買い取り、服役中の男たちの欲を発散させる道具にしていたのです。全身を傷だらけにされ、手酷く犯され、ボロボロになっても、少女は解放されず、結局は死を選びます。。
もといた孤児院の友人たちはそんなことは知らず、きっとあの子はブラッドハーレー家に上がり、幸せな暮らしをしているだろう、来年こそは私も、と夢を見て、少女を羨み、丁寧に描かれる、少女たちの純粋な、歌劇団に入りたいという気持ち、それと対比に勢いよく描かれる、刑務所でのシーン。読んでいてとても辛くなります。
初めて読んだ時、なんて救いがない話なのだろう、と思いました。読後感がなんとも言えない薄気味悪さがあり、しかし最終話ではどことなく希望があるような、どこまでも辛いけれどページをめくる手は止まらない、不思議な魅力を持った漫画です。何度も読み返してしまいます。
読み始めからバットエンドを覚悟しそうな救いのない漫画
数ページめっくっただけで幸せな終わり方が想像できない漫画もあります。
闇金ウシジマくん
闇金融業(カウカウファイナンス)を5~6人で営むウシジマくんを中心に、債務者の話が展開される少々バイオレンスな作品。利息は10日で1割という違法金利にも関わらず、回収率は非常に高く、周りの金融屋やヤクザ達からも一目置かれる存在のウシジマくん。ギャンブル依存症の主婦や、自宅警備員を抱える家族、薬物中毒者やヤクザとの抗争etc....様々な債務者達との戦いが展開されるためごちゃごちゃしてくるが、抗争でキャラクターは整理されていき、また短編で綴られていくため飽くことなくテンポ良く読み進められる。
そしてこの漫画の売りとして、リアリティーのある擬音や描写が特徴の作品であるから尚更なのだが、債務者たちの地獄のような経験(監禁・暴力・薬物・貧困)を経ても同じ過ちを繰り返す事が多く、救いがない人間の弱さの表現は秀逸。
誰かのせいにして自分を正当化したり、SNS上でだけは華やかな生活を演じていたり、自分だけは特別であると信じて借金を膨らませていく人間達の発言や行動には救いがないと感じるが、似たような経験(ギャンブル・浮気・借金)をしたことがある人なら誰しもが共感してしまうことだろう。
ヒミズ
中学生の主人公が父親を殺すという「十字架」を背負い、苦悩し、最悪の結末を選択するストーリーです。
父親が残した多額の借金のせいで、ヤクザとトラブルになり、それを知った同級生が、電車で偶然出会った男と現金を盗む計画を企てる。計画の途中、帰宅してきた家主を、同級生と男が襲い殺してしまい同級生も主人公と同じく、人殺しという十字架を背負ってしまいました。
主人公の同級生の女の子は、常に気遣いながら、なんとか主人公を立ち直らせようとしますが、聞く耳を持ちません。ある日、トラブルになったヤクザから、同級生が主人公の親の借金を返済したことを知らされます。そのことを知った主人公は、いつもいっしょにいた同級生と距離を取るようになり、別の日、このヤクザから拳銃を「自由に使え」といって手渡されますが、拳銃は特に気にもとめず自宅に置いておきました。
いつしか同級生の女の子と気持ちを通わさせるようになった主人公。しかし、父親を殺したという十字架から、自分はまともに生きられないと苦悩し続けます。女の子に父親殺害を告白すると、警察を連れてきて「自首しよう」とうながされ、翌朝に出頭することを約束しましたが、自宅に置いてあった拳銃で主人公は命を絶ちました。
どの登場人物も幸せな選択をすることができず、読み終わると救いがない気持ちを抱いた漫画です。
累
美しい容姿とずば抜けた演技力を持つ女優、淵透世の娘として産まれた淵累は、そんな美しい母とは似ても似つかない醜い容姿をしていました。幼い頃に母と死別した累は、通っている小学校でもその容姿から蔑まれ、孤独な日々を送ります。
そんなある日ふと累は、母の「本当につらいときは…ママの鏡のひきだしの中の“赤い口紅”を…」という言葉を思い出し母の言葉の通りその口紅を塗ってくちづけをすると、なんと相手の顔と自分の顔を入れ替えることができたのです。クラスメイトの可愛い女の子の顔を奪い、彼女に成り代わりシンデレラとして学芸会の舞台に立った累。終演時の賞賛の拍手によって、普段との待遇の差を思い知ると同時に、演じるという楽しさを知るのでした。そして「母もこの方法で誰かの顔を奪っていたのでは?」という確信にも近い疑念を抱きます。
18歳になった累は、母の口紅の秘密を知る羽生田という男に導かれ、丹沢ニナという美しい顔を持つ駆け出しの舞台女優に引き合わされ、彼女は「眠り姫症候群」という、急に眠りに落ち数週間目覚めないという病気のため思うように役者としての活動ができずにいました。母からもあと2年して治らないなら女優はあきらめろと宣告され後のない彼女は、累に顔と名前を貸して、丹沢ニナという存在を舞台に立たせて名を上げようとしていたのです。利害の一致したふたりは協力関係を結びますが、演出家の烏合という男を共に好きになってしまい、その件でもめている最中に再度「眠り姫症候群」が発症してしまったニナ。
目が覚めると、累は丹沢ニナの顔を借りた容姿をより洗練させ、演技力もさらに上達させていました。もしも自分自身が舞台に立ったとしても、彼女の演技を超えることはできないと知った彼女は絶望し、累の目の前で屋上から飛び降りて自殺を図りますが、幸か不幸か植物状態で一命をとりとめたニナ。ニナを自宅へと引き取った累と羽生田は、なおも彼女の顔を借りて、舞台の上に立ち続ける道を選びました。
人々を魅了する演技の裏に生み出される数々の犠牲。あまりに理不尽で救いがない展開に心が苦しくなります。演劇と美貌に取りつかれた累は、どこまでも苛烈な道を進んでいき、その果てに待っているのは賛美か、地獄か、彼女の行く末がとても気になって仕方ありません。
ベルセルク
中世ヨーロッパをモチーフとした世界 主人公ガッツは、死体が吊るされている木から汚水まみれの上に産まれた不幸な生い立ちである。傭兵団に拾われたガッツはそのまま傭兵として、育っていって育ての親であるガンビーノを偶然なのか不運なのか殺害をしてしまい、傭兵団を拠り所としていた場所から逃げるように追われて一人で生きていくことを決意。数年後ガッツは流れの傭兵をして生活をしていき、のちの鷹の団という、国で一番トップの実力を持つといわれている傭兵団と遭遇、その後 戦友―グリフィス 宿敵ともいえない複雑な相手と出会う。
グリフィスと決闘に敗れ、鷹の団に所属することとなり、地位を高めていって部下からも慕われる存在にガッツはなっていく…。
団長グリフィスがいつからか首から下げている呪物:ベヘリット【覇王の卵】と呼ばれるモノをガッツに聞く。これを身に着けている人は世界をも手に入れる。「俺は俺の国を手に入れる。」そして魔法なんて存在しないと思われていた世界に怪物がいたのかと思わせる怪物が登場。その名は不死のゾッド
獣と人とも言えない存在が鷹の団の前に現れ、不死のゾッドが、グリフィスとガッツに襲い掛かるが、両者傷を負いながらも反撃。ゾッドが「覇王の卵」をグリフィスが所持していることをわかり、ガッツに忠告をして去っていく。グリフィスは国の実力者として、昇級昇進をしていく中、ガッツは、対等にはなれない。鷹の団を出ていくことを決意し、それに反したグリフィスはガッツと決闘をする。しかしガッツは勝利をし、そのまま出ていく。
そこからグリフィスの栄光は砂の城のように崩れていく。血迷って国のお姫様に手を出してしまい、拷問・幽閉・監禁をされてしまう。四肢の腱は削がれて、自力では立ち上がることも舌も切られて伝える手段も失い、死を選んだが死ねずに絶望をしたところに、応えるように覇王の卵が異界への門を開きゴッドハンドと呼ばれる守護天使が出現。作品の中では異質な存在とも言えよう。鷹の団をささげることにより、体は再生し、自分の望みを叶えることを知り、鷹の団を生贄となり、魔に捧げる。
ガッツも生贄となり、蝕から解放されるが、烙印を押されたものは、死後は地獄と決められている。さらに五体満足だったガッツも目と片腕を失い、復讐の旅が始まるが、ガッツはどう足掻いても地獄へ行く。この作品、主人公の想いを遂げることをゴールとするなら救いはあるものの、はたから見ていたら誰も得をしない、誰も正義とは言えない、そして思いが叶っても主人公は報われない。こんなに救いがないのに魅力を感じる作品は他にあるだろうか。
読み終わった後に鬱な気持ちになる救いのない漫画
せめて結末を納得できるものにしてくれれば読んだ甲斐があるのですが、あえて救いが全くない結末にした作者の意図はどのようなものがあるのでしょうか?
おやすみプンプン
おやすみプンプンは主人公の男の子の半生を描いた漫画です。
主人公プンプンは普通の人間なのですが、なぜか作中では細いトリのような姿で描かれているのが特徴的。小学5年生の時に出会ったプンプンと田中愛子の、半ば宿命のような物語で全体的に重く、鬱々とした雰囲気なのですが、登場人物の設定に妙にリアリティがあって引き込まれます。プンプンは複雑な家庭ながら色々な友達や女性と出会い、明るく過ごす時期もありますが、田中愛子のことがどこかで忘れられません。
紆余曲折ありながらも彼女を救い幸せにするため、人まで殺め、そこまでの決心をもって共に一緒になろうとするのですが、最終的に彼女は自死を選択。
プンプンはその後もそれなりに生きていくラストではありましたが、読み終わる頃にはすっかり感情移入してしまっているので、読者もプンプンと同じような一生埋められない穴があいたような虚無感に襲われます。私はその読後感こそ救いがないと感じました。
死役所
様々な理由で亡くなった人が、成仏の為に手続きを行うシ役所。死因毎に別れた各課を訪れる『お客様』と元死刑囚で簡単には成仏できないため、そこで働く『職員』の交流や、自らの死と向き合い、受け入れたり反発したりする姿を感情豊かに描いています。
そう聞くと感動的なエピソード満載の泣ける漫画かと思いますが、終始その実救いがないようなエピソード満載の重い空気に。
虐待死にも関わらず母を慕っていた子供はやっと邪魔者が居なくなったと切り捨てられ、恩人の身代りになった女性は、その恩人が実は訳ありの人間を奴隷のように扱う悪徳業者だったことを知らずにいたり、奥さんを亡くした老人は、奥さんが大切にしていた友達や仲間と交流を持とうとしたにも関わらず、本人の人柄によって嫌われ、最期は誰にも看取られることなく孤独死する。
話が進むと、職員の過去についても触れられますが、誰かを守るために罪を犯した者が居れば、罪を自覚できないでいるサイコパスが居たりとこちらも中々に救いがない話の連続です。良くも悪くもオチに裏切られる展開に、夢中で読みふけってしまいます。
殺し屋1
この物語は、とにかく読んで後味が悪く誰に対しても救いがない物語です。
舞台は、通称ヤクザマンションと呼ばれている新宿歌舞伎町のとあるマンションで展開。はぐれ組のグループと垣原率いるヤクザ組との抗争です、主人公のイチはジジイ率いるはぐれ組の殺し屋にいます。この物語に出てくる人物はどこかしら世の中から外れていたり異常な心を秘めていたりしていて、通常の世の中に適応できない人たちが出て、主人公のイチはもともと気が弱い人間ですが、ジジイによってマインドコントロールにおかれジジイに言われるまま殺しすることに。
対する垣原は異常性愛者で根っからのマゾヒストです。抗争が進んでいくにつれイチは戦いを避けたい自分が相手を痛めつけることに快感を覚え、また垣原はイチの圧倒的な暴力に惹かれていき…。2人は最後にマンションで殺し合いをして垣原が殺されてしまいます。三年後、目的を果たしたジジイはさらなる異常を求め、対するイチは殺し以外の喜びを見つけたものの、最後はヤクザに絡まれて終わります。全く救いがない物語です。
ミスミソウ
表紙の絵が繊細なかわいらしい女の子の絵だったので読み始めたのですが、まったく救いがないトラウマになる内容でした。東京から田舎の中学校に転校してきた主人公の春花。彼女はクラスメイトから執拗なイジメを受け、それに耐え続けていました。しかし、イジメはどんどん過激なものになり、担任の先生も自分がいじめられていた経験から、いじめる側に媚びをうり助けてはくれません。そんな中でも仲の良い妹や両親との生活を大事にし、同じく都会から転校してきた男の子の同級生・相場ミツル(漢字では日に光)と打ち解けていくことで、穏やかに過ごそうとしますが、クラスでのイジメはヒートアップしていき、、遂には自分の家を放火されます。両親を焼き殺され、妹は重度の火傷で意識不明になり、春花はクラスメイト達に復讐することを決めるのでした。
この作品は、人によってはトラウマになるくらいに、最初から最後まで救いがない内容で、春花が受けるイジメも、春花がイジメっ子達に行う復讐も、残虐な描写が含まれていて、とても中学生が手を下せるものとは思えない程に過激。登場人物は、クラスメイトもその親達も、教師も狂人ばかりで、中には自分もイジメられた過去を持つ者のエピソードも出てきますが、それを考慮したとしても同情出来る人がいません。
主人公の春花も、イジメっ子達への報復を考えると共感できないですし、唯一共感できそうな春花の家族は、酷い仕打ちを受けているだけで何も救われないので、読んでいて鬱になりそうでした。読み終わっても、スッキリしない、悲しさ悔しさ恐ろしさ、虚無感が残る内容です。絵が、最近多い“ヘタ上手い”部類で、そこがまた怖さを引き立てていて。ただ残酷なシーンの恐ろしさもありますし、それぞれの醜い部分もかいま見え、とても深い漫画です。トラウマになりますが、中毒性も、こんなに救いがない漫画を読んだのは初めてですが、そこがこの作品の魅力なのだと思います。
たとえ灰になっても
男子高校生・四宮良真は両親を事故で失い、共に残された妹の幸花を大切に思っていたが幸花は余命1ヶ月の難病と宣告されてしまい、更に治療には莫大な金額が掛かると告げられ、資金集めに奔走するが足蹴に断られ続ける。
焦心する中、謎の女が"ゲェム"勝てばいくらでも望む金が手に入ると語り、「望むモノのために命を懸ける事は出来るか」と迫る。その質問に良真は「妹のためなら命だって差し出せる」と答えると、女は"ゲェム"に参加する為のチケットを良真に手渡し消えた。不審に思いつつも受け取り歩いていると、良真は"壮絶な"交通事故に巻き込まれて死んでしまう。しかし、目覚めるとそこには自分とは全く似つかわぬ『少女の姿』となった良真と、同じく困惑する『少女達』が―――?
「人間が大好き」な天使を自称する"ゲェムマスター"が主催する、人間の慟哭が織り成すデスゲーム。最初は謎の女に騙されて参加した被害者達が金や意地、或いは命の為に加害者に転じていく展開が読者の正気を削り取り、ゲェムの敗者には前述に"壮絶な"と強調したような交通事故以上の死に様を映し出す。死に淵の絶望や恐怖といった様々な感情が入り混じった表情は正しく救いがないと称される描写であり、作者急逝の為続編が絶望的なのを考慮しても存分に脳裏に焼き付く作品です。
BLACK LAGOON
ごく普通のサラリーマンであったが東南アジアで海賊拉致されてしまい、紆余曲折あって海賊の一員となった岡島禄郎こと「ロック」と、その海賊たちが東南アジアのとある街「ロアナプラ」にて様々な事件に巻き込まれていく話。
すべての話が読み切りとなっているが、そのどれもが救いがないバットエンド。出てくる登場人物の殆どが壮絶な過去(孤児だったがチャイルドポルノやスタッフビデオに出演させられ、快楽殺人者となった2人の少年少女や、もともとは読書を好むごく一般的な女子高校生だったが、組長の娘であったために暴力団とギャングの事件に巻き込まれて自ら組長になることを決心した少女)を持ち、それを背負いながら日々戦っている姿は非現実ながらも読者に同情心を抱かせるのだが、そのすべてが最終的に悲しい結末につながるため、精神的に来るものがある。
東京闇虫 2ndscenario パンドラ
25歳の普通のサラリーマン、野々宮は我慢して真面目に生きていくことに誇りを持っていて、自分より社会性が劣っていると思う人間には、ひそかに優越感に浸るような男。ある時を境に今まで劣っていると思っていた人間たちの方が、世の中で優位に生きていることに気づき、そこから、野々宮の転落が始まります。
会社を辞め、転落中に知り合った浅村の下で闇社会で生きていくことを決意するのですが、出てくる人物がゲスな奴らばかり。そして、そんなゲスな奴らが得をして、真面目に生きたり、根が純真な娘達が食いものにされし、染まる奴はどんどん染まるなどこの作品には救い一切ありません。結局は、自分をしっかり持って信念をもって生きている風俗嬢をやっている娘達が一番強いし、一番幸せ。その幸せに行きつくまでも、不幸が降り注ぐし、スカっとするような逆転劇はありません。
「努力は報われる・捨てる神あれば拾う神あり」そんな言葉がある今生きている世界の方がよっぽどマシ、そう思わせてくれた漫画です。
乃木若葉は勇者である
「結城友奈は勇者である」の前日憚でなのが本作品「乃木若葉は勇者である」であり、物語は数百年前にまで遡ることになる。
出雲での修学旅行中に謎の生物であるバーテックスに襲われた乃木若葉は、幼なじみ上里ひなたの言葉である刀を手にしたことから勇者としての能力に目覚めた。乃木若葉をはじめ勇者の力に目覚めた少女が香川を舞台に人類の敵バーテックスに立ち向かっていく。物語は結城友奈で完結するため、本作品の勇者である少女達は二人を残して全滅する形で幕を閉じることになるのはある意味必然的なのだが…
救いがないのは日本全国の各都市が全滅している状況で敵である“バーテックス”の巣になっていた現状をはじめ、これでもかというほど絶望が繰り返されること。圧倒的な敵の存在、敵により散っていく仲間達、それによって守るべき民衆から非難され、そしてなにより勇者の力を使うことで身体の機能が失われていくこと、さらには勇者の本部とも言える大社にも大人の都合で翻弄されていくもう絶望しかない状態に陥っていき病んでいく。
結城友奈に物語が続く以上致し方ないとはいえ、登場人物が病んでいく、肉体的にも精神的にも追い込まれていくのは読んでいて辛いものを与えるはずだ。生き残った二人と死亡後神樹に吸収された高嶋友奈以外の戦死した三人の描写は過酷、苛烈としか言い様がない。
独りは嫌!トラウマ系救いのない漫画
人に好かれたい、誰かに必要とされたい、なのにこんな結末って。。
君に愛されて痛かった
中学時代のいじめがトラウマになり、高校では同級生に合わせてばかりのかなえ。家でも学校でも自分の居場所がないかなえは、自分を必要としてもらえる援助交際を繰り返し、心の安定を図っていた。ある日、カラオケ合コンで知り合った他校の男子・寛に援助交際を目撃される。寛に「援助交際は普通の人がすることではない」と言われるも、かなえにとって心の拠り所であった援助交際を否定され、取り乱してしまう。それでも寛はかなえを見捨てずに寄り添い、かなえは寛に少しずつ恋心が芽生えていく。その想いが悲劇の幕開けになることも知らずに…。
漫画はかなえが寛に殺されるシーンから始まります。そのため、読者は「最後は殺されてしまう」という救いがないことを知りつつ、どうしてその結末になるのかを追っていくストーリーです。女子高生の心理描写がとても繊細でリアルに表現されていて、読んでいて共感できる部分が多々ありいじめや強姦など胸糞の悪いシーンもあるので、苦手な人は苦手だと思います。
結末を知っていても最後まで見届けたくなる漫画ですし、まだ完結していない作品なので最後まで怖いながらも楽しめそうです。
世界鬼
主人公、東雲あづまは家族から性的暴行や暴力など虐待を受け壮絶な日々の中、精神を病み、鏡に不思議な光景が映る「鏡の国のアリス症候群」という病気になってしまう。そんな中突然奇妙な姿をしたものが鏡の中から現れ、鏡の世界に連れていかれたあづまはそこで同じ「鏡の国のアリス症候群」を患う6人の人たちと出会い、そして、奇妙な生き物に「この世界に現れる世界鬼を倒せ」と命じられるが、世界鬼を倒すことによって身近な人一人の命が奪われるという仕組みがあった。あづまは自分を虐げ続けた家族の命を奪うべく、世界鬼を倒す「アリス」として戦っていく。
小学館の出版ということで、ファンタジーバトル漫画かと思いきや内容の壮絶さな漫画です。まず第一話からあづまの家族による性的・身体的虐待のショッキングなシーンから始まり、あづまの世界観の闇をひしひしと感じます。鏡の国で出会う若者一人一人もそれぞれストレスを抱えながら生きている背景があり、不安によって友人に依存していたり性行為依存症、薬物依存者だったりと闇が深い人物が多く、世界の滅亡を防ぐためには「アリス」として世界鬼を殺さなければなりませんが、世界鬼を殺せば大切な人が死ぬというなんとも救いがないストーリーのバトル漫画です。
さよならハルメギド
主人公は小学生の男の子、しょうたは、母と2人で支援施設で暮らしいる。原因は、仕事を失い不運が続いてイライラした父に暴力をふるわれたから。しょうたはお父さんが大好きだし、お母さんと3人でまた一緒に暮らしたいと思っているけれど、お母さんには別に支えてくれる人がいるようで…。
そんなしょうたは、学校ではクラスメイトの百田さんをついついいじめてしまい、百田から激しく拒絶されたしょうただけど、やりとりをするうちに2人は距離を縮めていく。一方でしょうたと仲のよい子が隣に暮らすななこ。初めは男の子だと思っていたが、母のため兄の名を名乗って男の子のふりをしていて、母に愛されようと必死なななこ。家族の離散をどうにか食い止めたいしょうた。そして、自分は家族の誰にも必要とされていないと思い込んでいる百田。大人の身勝手に翻弄される子どもたちの救いがない姿に胸が痛くなる。しょうたは小学校卒業を機に引っ越すが、高校生になって再会を果たし衝撃のラストを迎える。
「愛=ハッピーエンド」ではない救いのない漫画
愛があれば幸せ!というわけでもない。恋愛が絡むからこそ救いのない結果もあり得るのである。
ドメスティックな彼女
主人公の夏生は高校教師の陽菜と付き合う事になり、その妹の瑠衣とも関係してしまう。しかし、そんな時に父が再婚することになり、なんとその再婚相手が連れてきた子供が、陽菜と瑠衣だった。そこから救いがない生活が始まり夏生は、好きで書き始めた小説が賞をとってしまい、そんな事から注目を集め初め、週刊誌に教師と付き合っている事がバレてしまう。そして、陽菜と別れて妹の瑠衣と付き合い初め、大学生活や遠距離恋愛を乗りきり、瑠衣は夏生の子供を妊娠、出産する。
幸せな生活になろうとする矢先、姉の陽菜は事故にあい、植物状態に。そんな中で二人だけ幸せになれないと婚姻届は出さずに子供との生活を続け、陽菜の面倒も見続ける二人。最終的には、陽菜も目を覚まし、夏生は陽菜と結婚するのです。
最後まで漫画を読み、救いがない夏生の身勝手さには腹立たしく思えます。なんと言っても瑠衣との子供が可哀想ですし、父親としての自覚が無さすぎ。中盤までは、とても面白く引き込まれて読んでいたのですが、後半になるにつれて話し自体が救いがない感じがしました。
なるたる
作品名:骸なる星、珠たる子(通称:なるたる)
小学6年生:玉依シイナが主人公。父親がパイロットで母親は国家機関の科学者で、玉依シイナは田舎に戻りおばあちゃんの家で過ごす毎日、ある日未知の生物・存在の竜の子「ホシ丸」に主人公シイナが出会う処から物語は一気に加速する。
竜の子とリンクするシイナが襲われたり、日常の学校生活に戻ったら友人がイジメられるなどといった思春期の少年少女にスポットを当てている作品で前半は、竜の子を持つ子供達とかかわるシイナが、戦いに巻き込まれて街を巻き込む被害に発展し、その行く末に、友人・家族を失う羽目に。そこから歯車が崩れてシイナは精神崩壊。中学生にもなったシイナにしてはひどい仕打ち、友人家族を失い、最愛の人を亡くし、人類を滅ぼすことを決める。
シイナともう一人の少女が生き残り シイナと少女の子供は生まれるが、たった二人だけ。最終的には人類絶滅ENDを迎え、前半のほのぼの?とした雰囲気からは想像できない最後となり、救いがない作品である。
極黒のブリュンヒルデ
幼少期に事故で死なせてしまった幼馴染と交わした「宇宙人の存在を証明する」という約束を主人公が果たす物語。
最初は読んでいて楽しいと感じる場面もありました。物語の展開やキャラクターが自分の好みで大満足というわけでもないのですが、要所要所でのギャグもセンスがいいなと思っていたのですが、話が進んでハーレム化するとダメになってしまいました。
途中からは、なんで、の方向に持っていくのだろうと、まさに救いがない状態になってしまったのです。都合の良いキャラクターと展開のオンパレードに。エロ・グロ要素も多めなのですが、別にそういうのを求めていたわけでもないので、どんどんがっかりした方向へと行ってしまいました。緊張感を壊す取って付けたようなサービスが邪魔で、少女をいたぶるのが嗜好なのかと思えるくらい見てて憤りを感じることもあったほど。
鎮死剤がなければ生きていけない身体→それを奪い合う→友情を感じて譲り合い、鎮死剤を受け取らなければ身体がドロドロに溶けて無くなる。
エロとグロを組み合わせるとこうなるのかと、ある意味感心した作品でした。
最終兵器彼女
舞台は北海道、主人公のチセとシュウジは高校生で、付き合いたての初々しいカップルです。チセは小さくてのほほんとした可愛らしい女の子。しかし、世界は戦争に見回れ、その中、兵器として戦うチセの姿をシュウジは目撃してしまいます。人を殺す兵器として戦う彼女は時間を追うごとに兵器として蝕まれ、肉体的・精神的に人としての意識が失われていく中、シュウジを好きな気持ちを忘れたくないチセ、なんとかしてチセを止めたいシュウジのお互いを想う気持ちが切ないです。
戦争は激化し、たくさんの命が奪われていきます。クラスメイト一人一人にも人生があり、思いもむなしく死んでいくところはただただ悲しいばかり。地球の結末を愛する彼女から聞かされ、それを引き起こすのがまさにその彼女。シュウジは最後に姿と失い完全に兵器と化した彼女と対峙します。地球が崩壊し、生命が失われて、彼女の中に取り込まれたたった一人の自分。二人の最後はわかりませんが、ちせと共に宇宙をさまよいながら塵となっていくのだろうな、と思うラストでした。ハッピーエンドの価値観は人それぞれですが、全体を通して救いがない物語です。
砂時計
主人公の植草杏が両親の離婚をきっかけに東京から島根に母とともに引っ越してきて、田舎特有の近所付き合いや距離の近さからデリカシーのない人たちばかりと感じるが、同じ地域に住む北村大悟と出会って仲良くしているうちに環境に慣れてくる。母の助けになるために大悟とともに村の地主の月島家に手伝いに行き、椎香と藤に出会う。
4人は一緒に行動をする中になり、杏は自分の居場所を見つけたように感じていたそんな中、杏の母が突然いなくなり、亡き人となって発見された。落ち込んだ杏を大悟が支え一生一緒にいると誓う。中学に上がり杏と大悟の間に恋心が芽生え、サマーキャンプをきっかけに付き合うようになるが、高校から杏が東京の父の元で暮らすこととなり遠距離恋愛に。遠距離恋愛となったことで二人の間に亀裂が入り別れるが、大人になってやがて二人は結ばれる。杏と大悟の二人の恋だけではなく影では藤が杏に、また椎香が大悟に恋心を抱いているため、杏と大悟の絆は強く藤と椎香の思いには救いがない。
途中まで面白かったのに作者のやる気に救いを感じない漫画
途中まで神作品だと思っていたのに、作者や制作サイドの都合で救いのない結果を招いた漫画、これこそ本当の罪なのでは?
ヤンキー君とメガネちゃん
序盤は素晴らしい出来だったと感じますし、設定と絵は非常によく、セリフもギャグも面白いと感じていたのですが、全体を通じて最低の一言に尽きます。
キャラクターもそれぞれの表現方法が良く、学園ものとしては良いマンガの分類に入る作品だと思っていたところ、後半になるにつれ、徐々に何かぐだぐだとなる展開に。学園もののマンガは、この様な中だるみはよく見られるので、この作品も同じ感じなのかなと思っていたのですが、それではなく、救いがないままで最終回までいってしまったのです。
途中、少々辟易しながらも、主人公の核心に迫る話を待ち、大きく広げた伏線をどう回収するかと、少しながらも期待をしていたのに、完全に裏切られました。
主人公の花の正体について、結局明確な答えを出す事もなく、未来に持っていくものとして片付ける。最後には、読み終えて、あれ、これで終わっちゃうの?と思わせてしまうことは避けてほしかった。まだ出会ってから3年しかたってないからね。彼らには未来がある、私自身いつかまた続きを書きたい。そう思っています。という逃げ口実。もう、これだけがっかりした作品になるとは、ある意味驚きです。
作者:吉河美希/講談社
HUNTER×HUNTER
主人公の少年ゴンフリークスは、幼い頃から両親がおらず、父親は死んだと聞かされ田舎で育ってきた。ある日、実は父親は生きていて偉大なハンターである事を知り父親に会うことを目指して、ハンターになり冒険をしていく物語。主人公ゴン・フリークスは父親に会いたい思いが募り、厳しい訓練をしてハンターになり、色々な冒険をして父親ジン・フリークスの手がかりを見つけようとしてきたのに、実際に出会うシーンが今までの冒険や特に感動するシーンや名言などなく、簡単に書かれていて救いがない。
主人公ゴン・フリークス1番の冒険の目的を達成する瞬間は、あっさりしていた。ワンピースで例えると、海賊王ゴールドロジャーが残した財宝ワンピースを見つけるために海賊になって命がけの戦いをしているのに、海賊じゃない探検家がストリートは関係なく財宝ワンピースが見つかってしまうくらい救いようがない。脱線してしまったが、最初の志を簡単なシーンで救いようのない状態にしてしまった。
ただ作品自体は面白い。途中から能力ものに変わるが、基本的に仲間との友情シーンや仲間とは何かを考えさせられる作品になっている。話がこんなに面白いのに、作者はとにかく休みがち。現在も連載中なのに単行本が年に1冊も出ない。いつ出るのかもわからない。面白いのに先が読めない、というより作者が全く書かない、これは救いを求めたって時間が解決してくれる、のだろうか。。
幽遊白書
生まれながらに霊感の強い性格が粗野で乱暴の不良生徒の主人公、浦飯幽助が自らの死をきっかけに唯一無二の仲間と出会い、共に妖怪相手に、魔界に霊界にと戦いに明け暮れて成長していくとゆくというストーリー。
はじめのうちはほのぼのとした話も多く絵も可愛らしく読んでいられましたが特に後半にかけて人間をゴミ扱いする、尊厳を踏みにじるような、残酷な描写が多数あり、世界観もひどく陰湿で暗く、人を嘲笑うような表現がたくさんあり絵も雑になって最後にはラーメン屋になるなど、実に救いがないと思いました。読んでいて楽しい気分にはならないとも思いましたし、読み終わった後になんとも暗く嫌な感じが残ります。
基本的には人間界と霊界の間で主人公の「霊丸」という必殺技を交え、3人の仲間と共に強敵と闘っていくのですが、最後は3人中2人と魔界の主権をかけて戦ってハッピーエンドかと思いきや、漫画の終わり方は「終わり方がひどすぎた作品」として烙印するなどなんか人生落ちぶれてしまった人の話みたいで、主人公の魅力である心の奥底の優しさが最後にはあまり感じられなくなってしまいました。
その他救いのない漫画
上記のいずれにも該当しないものの、救いのない漫画をご紹介。
フランケン・ふらん
天才博士の手によって作られたフランケンシュタインのようなつぎはぎの姿をしている少女・ふらんは天才的な外科医の腕を持つ。その才能を買われ、彼女の元へたくさんの依頼人が訪れる。人間離れをしている神業で依頼人の深刻な怪我などなどを「画期的」な方法でふらんは救います。しかし、人間ではないふらんは人としての倫理観が欠けているためにその「画期的」な方法が依頼人の思惑とズレながらも、彼女なりに解釈した依頼人達の願望を叶え、時に恐怖に、時にグロテスクに。そんなブラックジョーク・メディカルオムニバスです。
ふらんの助ける方法が本質的すぎたり、目の前の願いだけ過ぎたりといつも依頼人達の願望をズレていて、どのエピソードも一度はハッピーエンドかと思ってホッとしていたら、その後に必ず予想外の結末を迎えて背筋がゾッとします。ブラックコメディという位置づけらしいですが、その救いがないオチは本格ホラーと並べても遜色ありません。
蟲師
『蟲師』であるギンコは、蟲と呼ばれる奇妙で下等な生物が起こす特異な現象を解決することを生業としており、漫画そのものは短編連作であり、そのうちの一つ『枕小路』。
ある日、予知夢を見るようになった男は、そのおかげで村人に感謝される毎日を送っていたが、たまたまやってきたギンコに、予知夢は「夢野間(いめののあわい)」という蟲の仕業でこのままだと頻度があがり、やがて目覚めなくなると指摘される。男はギンコに貰った蟲対策のための薬を飲んだが、しばらくしてから高波が村を襲い、浜辺で遊んでいた娘が亡くなってしまう。これを予知できなかったのは薬のせいだとして、男は薬を飲むのをやめる。それからまた少しして、予知夢で村人の身体が腐り落ち、消えて無くなるという夢を見る。そしてそれも現実となってしまった。そこで男は予知夢を見ているのではなく、「自身が夢で見たことが現実になってしまっている」ことに気づく。男はギンコにそのことを問い詰めると、ギンコは「夢野間は寄生されれば最後、一生共存していくしかない」ことを白状し、自身の責任を持って夢野間の治療を誓のだが、夢野間の住処が枕にあることに気づいた男は刀で枕を切り裂く。すると魂で繋がっていた男の身体も枕のように切り裂かれてしまう。
ギンコの応急処置によって一命をとりとめたが、ギンコが去ったあとも男は眠ることを怖がり、やがて発狂して自殺した。夢野間によって人生を狂わされた男がその蟲を切り離すことができたにも関わらず、後遺症に悩まされ結局自殺してしまったことに救いがないと感じた。しかし、蟲という奇妙な存在と接していくにあたってどうしようもないことが存在してしまうことも痛感。男も悪くはないが、蟲も悪くはなかった。お互いにただあるようにあろうとしただけ。今回は、蟲の方が強かっただけのこと。
まとめ
名作と呼ばれるものは完全な大団円、ハッピーエンドで終わるものが多いのですが、例えバットエンドでも作者が描きたかったテーマに沿うと救いがないと呼ばれる終わり方になるのかもしれません。
救いがない漫画は読んでいる時も、読み終わった時もモヤモヤした気持ちが残りますが、これは作者が意図した展開だと思うので、このモヤモヤ込みで救いのない作品を読んでみてはいかがでしょうか。