悲しい結末で終わる少女漫画から学ぶ【振り返りながら前に進む強さ】

物語は何もハッピーエンドで終わるものばかりではありません。

途中で打ち切られたならまだしも、作者があえて選んだ悲しい結末で終わる少女漫画もたくさんあります。

今回はそんな悲しい結末で終わるけど、読んだあと心がきゅんとしたり温かくなる作品をご紹介。

結末は悲しいけど物語が面白い少女漫画

悲しい結末と書いてありますが、全てがバットエンドというわけではなく、読んだ後に何かを考えらせられる作品を中心にいくつか凄いと思った少女漫画をご紹介します。

罪に濡れたふたり

罪に濡れたふたりの表紙

近親相姦の話で苦手な人は合わないかも知れませんが、世間では許されない2人が愛し合うことで、こんなにも周りの人を苦しませ、不幸にさせてしまうんだということが分かる漫画です。

主人公の2人に共感するよりも、その2人を好きになった人たちに共感することが多い漫画で、近親相姦をする親目線の描写もとても悲しく辛く感じることが多く、香純も由貴は姉弟だから愛し合ってはいけないと分かっていても愛し合って、惹かれあってしまいます。何度も離れようと努力するし、周りにバレないよう気をつける、でも最終的にはなによりもお互いが大事と認識。最終話は胸が熱くなる展開で、愛するってこういうことなのかな、と考えさせられます

Bananafish

Bananafishの表紙

容姿端麗頭脳明晰なアメリカン・ギャングのリーダー、アッシュ・リンクス。完璧であるが故に幼い頃から人に奪われ、蹂躙され、それでも自分を強く持ち生き抜いてきた。ある日、日本人大学生の英二と出会い、初めて人から与えられる幸福を知る。

主人公のモデルにもなっている俳優リバー・フェニックスの代表作「スタンドバイミー」を彷彿とさせる、常に周りの大人たちから奪われる側だった少年を、救済するための物語

見所は2人の関係性と儚いけど幸福な夢。BLといっていいのか迷いますが、アッシュと英二2人の精神面の繋がりは家族や友人、恋人を超えたもので、とても美しいです。

読者にとっては悲しい結末かもしれませんが、同時に、永遠に続く幸福な夢に救われるハッピーエンドでもあります。アニメ化もされているので動画で動きのあるBananafishを楽しむのもいいかもしれませんね。

僕の初恋を君に捧ぐ

僕の初恋をキミに捧ぐの表紙

幼いころから入退院を繰り返していたタクマと、病室によく遊びに来ていた医者の娘のマユ。二人は両思いであり、互いに20歳になったら結婚しようと誓い合っていた。だが8歳になったある日、マユはタクマが20歳までしか生きられないことを知ってしまう。どうにかしてその病気を治せないのかと悩み続けるマユ。タクマも己の境遇を後から知り、二人は段々とすれ違うように。

タイムリミットが刻々と迫る中、二人の関係ははたしてどうなっていくのか?

運命に抗おうとする少年少女の姿。初恋を、想う相手をいかに大切にしているかなど、登場人物の意志・感情の力強さに胸を打たれ、愛する人のために必死に行動する。それがどれだけ綺麗で尊いものかを感じることができる作品です。

僕の初恋をキミに捧ぐ
created by Rinker
僕は幸せだった。繭が好きで好きで、毎日毎日どんどん好きになってく。だって知らなかったんだ…。好きになっちゃいけないって。好きになっても無駄だって…。8歳の夏、僕は最低な約束をした。守れない約束をしてしまった――。20歳まで生きられない心臓病の少年と、彼を献身的に想い続ける幼馴染の少女の、あまりにも切ない、すれ違いのピュア・ラブストーリー。『僕は妹に恋をする』の逞と繭を主人公にしたスピンオフ作品。2009年10月には、井上真央と岡田将生主演で映画化。

NANA―ナナ―

NANAの表紙

2人のヒロインであるナナと奈々の人生や恋愛をテーマに描いていますが、複雑に何人もの人が絡みあい、単純に幸せな気持ちになれるような少女漫画とは一味違います。

作品の展開は前半に比べて後半になるとよりズッシリしてくる印象で最新刊はナナの大切なパートナーであったレンの訃報によって、読者は生気を失ってしまったナナの印象をひきずったままで現在も休載。この漫画は、安心してこの2人は結ばれるから大丈夫、といったある意味で少女漫画としては当たり前な確信を持つことが難しい展開で、常に物語の未来が謎に包まれているのが見所の作品。

摩利と新吾

摩利と新吾の表紙

明治の名門旧制高等学校を舞台に、摩利と新吾の友情と愛、先輩や仲間たちとの華やかな日々が描かれており、複雑な生い立ちの摩利とどこまでも明朗快活な新吾の関係が変化する作品。

2人が少しずつすれちがい、仲は良いままなのに離ればなれになっていくせつない展開が見所です。2人は互いを思い合っているけれども、摩利が新吾に恋心のような感情を抱いているのに対し、新吾はあくまで友情なので、微妙にすれ違っていきます。やがて舞台はセルビアに移るのですが、新吾と自分の気持ちの違いに気付いた摩利は日本に帰国しない選択。

時は流れ、2人は日本と異国でそれぞれ年を重ね多くの手紙を交わしあうものの再会することはないまま、第二次世界大戦によって、同時に死んでしまうのです。ロマンチックな少年同士の友情が好きな人におすすめの作品。

せつないね

せつないねの表紙

高校生の主人公・千絵は、父親の経営するパチンコ店で住み込みで働く年上の男性・恭司に恋をします。恭司のことが大好きな千絵は、高校の同級生には目もくれないのですが、そんな恭司には一緒に暮らす恋人・郁子という存在が。

同じようにパチンコ店で働く郁子は、綺麗で、優しくて、千絵は郁子のことも大好き。郁子の親に交際を反対されて駆け落ちをしたという二人は仲が良く、千絵が入り込む隙もなさそう。それでも恭司のことを諦めきれない千絵に、高校の友人がある入れ知恵をします。それは、郁子の親に二人の居場所をリークするというものでした

一途に恋をするが故の行動が、大変な事態へと発展し、それでも恭司の心には郁子しかいないことを千絵は知ることに。残酷な結果に胸が締め付けられますが、人を好きになるということは、決していつもハッピーエンドとはいかないもの。そこをしっかりと描ききり、最後には未来への光を感じさせてくれた、とても心に残る作品です。

ふしぎ遊戯 玄武開伝

ふしぎ遊戯 玄武開伝の表紙

主人公・奥田多喜子は、結核で母親を亡くし元々不仲だった小説家の父親・永之介とはさらに関係が悪化し、彼が中国語から翻訳した四神天地書を破り捨てようとした多喜子は、その本の中に吸い込まれてしまいます

彼女の行き着いた先は北甲国という国で、そこには世界を救う不思議な力を持つ玄武の巫女という伝説がありました。多喜子は北甲国を救い、母親を生き返らせるため、玄武の巫女になる決意。そして、神獣・玄武を呼び出すために、仲間の玄武七星士を探す旅に出ます。その中で、七星士のひとり・女宿と恋仲になりますが、玄武の巫女が神獣の生贄になると知った永之介は、多喜子を現実世界に呼び戻そうとし女宿達もその事実を知り、わざと冷たい態度を取って多喜子を遠ざけるのです。

現実世界に戻った多喜子は一度は女宿を諦め、別の男性と結婚しようとしますが、やはり彼を忘れられず、その矢先、多喜子も結核に感染し絶望しますが、最後まで巫女の務めを果たすため、再び北甲国に戻ることを選ぶのでした。

この作品の醍醐味は、何と言ってもヒロインの多喜子の強さで見知らぬ土地に放り出されても、いくら周りに冷たくされても、ギリギリまで諦めない頑固さとバイタリティはとてもカッコいいです。
終盤の多喜子は、病死か生贄という、どっちに転んでも救われない未来しかないところが切ないですが、それを覆すような決断をする永之介には思わず言葉を失います。

恋人同士が結ばれないという意味では、少女漫画としてはかなり異質ですが、最後まで純愛を貫き通す多喜子と女宿の間に誰も割り込めないところに、ふたりの絆の強さを感じるので、バッドエンドの中にも少し救いを感じることができる、不思議な魅力のある作品でした。

Piece

Pieceの表紙

大学生である水帆に、高校時代のクラスメイトである折口はるかが亡くなったという連絡が入ります。特に親しくなかったはずなのに、母親には親友だと言っていたらしく、そのつながりから折口が高校時代に妊娠・堕胎をしていたことを知る。

折口が付き合っていた彼を探すことになる水帆。水帆が好意を持っていたひかるや、折口に高校時代に好意を寄せていた矢内先輩など、さまざまな人たちと繋がりながら、表題のようにpieceをひとつひとつ回収していくように物語が進んでいくので、一気に読み進めてしまいました。最終巻で、とうとう水帆とひかるの関係がどうなるのかとヤキモキしながら読むのですが、心療内科医であるひかるの母も絡んで、何とも言えない結末を迎えます。読者によって捉え方が変わる結末だと思います

女王の花

女王の花の表紙

戦乱の世を描いた作品で主人公の亜姫は亜国の姫として生まれました。しかし、実母が貧しい家の出とあって、宮中では冷遇され育っており、そんなある日金髪碧眼で気味悪がれてれいた奴隷の薄星と出会い、彼を助けます。これがきっかけで薄星は亜姫に生涯誓うことを決め、共に生きていくのです。

そして幼いながら亜姫は、敵国の黄国へ人質として送られることになるのですが、戦乱の世、王位継承争いに巻き込まれ、奔走される亜姫と薄星。2人の運命が壮大に描かれた作品です。オススメポイントは王女と奴隷という決して許されない二人の切ない恋模様。王女として薄星を守ろうとする亜姫の気持ちと、奴隷として命をかけた亜姫に対する行動に胸を打たれます。

ラストは悲しくはありますが、読み手それぞれの捉え方ができる内容となっているので、最初に読んでからあっという間に読み切ってしまう、そんな作品でした。

魔法騎士レイアース

魔法騎士レイアースの表紙

CLAMPによる少女漫画で、異世界の危機を救うためこちらの世界から召喚された三人の中学2年生の少女たちによる戦いの物語。可愛さと格好良さを併せ持ったデザインとキャラクターが魅力的。

可愛くて可憐で、でもどこにでもいるような普通の女の子たちが、試練を乗り越えるにつれて強くたくましい「騎士」へと成長していくのに、幼少期の私はとても憧れました。異世界の人々と協力しあって危機を脱して異世界に平和を取り戻し、3人は元の世界に帰れるんだとわくわくしながら読んでいたのを覚えています。

ただ、この漫画はそんなよくある勧善懲悪、テンプレートなヒーロー物ではありません。キラキラ輝く世界観の裏側に一体何が起きていたのか、ぜひ最後まで読み進めてほしいです。

まとめ

個人的にはハッピーエンドが何より好きなのですが、バットエンドとまではいかなくてもそれに近い悲しい展開で終わる作品は読んだ後に必ず何かを考えさせられる作品が多いですよね。

頑張り屋努力は必ずしも報われるとは限らない、むしろ不幸だと思う状況からいかに後ろを振り返りながらでも前を向くことの大事さを学んだ気がします。

悲しい結末でも色々考えさせてくれる少女漫画は奥が深すぎです。