イルーゾォは少しかわいそう「ジョジョ第五部黄金の風」暗チ第三の刺客

今回の主役は暗チ第三の刺客、鏡の世界のイルーゾォさんです。

緻密な推理、しっかりとした根回し、計算された戦闘スタイルにギャングの名に恥じぬ見事な覚悟の持ち主でありながら、どうにも拭えないかわいそう感。

一体何が彼をかわいそうに思わせてしまうのか?その理由を分析してみました。

暗殺チーム第二の刺客イルーゾォ

イルーゾォ
引用元:ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風BS11放送分より抜粋

コードネーム:イルーゾォ(幻影・空想家)
年齢:21~24歳(リゾット28歳、ブチャラティ20歳あたりからの比例から推測)
スタンド:マン・イン・ザ・ミラー(通称マンミラ)
対戦:フーゴ アバッキオ ジョルノ
戦果:黒星(感染及びラッシュでフルボッコ)
声優:成田剣

ホルマジオがナランチャに敗れハチの巣からの炎上死を遂げた同日、イルーゾォは暗チ第二の刺客としてジョルノたちを待ち伏せすべくポンペイ遺跡に潜伏しました。『黄金の風』は内容が盛りだくさんであるため勘違いしやすいのですが、作中で流れた時間はジョルノ登場からボスが倒されるラストまでわずか10日足らずなのです。

外見的には腹部の露出が激しいことを除けば普通にイケメン青年なイルーゾォ。繊細に整った顔には粗野な印象はなく、体つきもやや華奢に見えることからギャングっぽさはあまりありません。見るからにスタイリッシュ・チンピラなホルマジオとは異なったタイプのギャングです。

イルーゾォはファンタジックかつメルヘンでありながら、極めて特異なスタンド能力を効率的に使い、フーゴ、アバッキオ、ジョルノの知性派三人を相手に善戦しました。

フーゴ アバッキオ ジョルノ――この三人を一人で相手取るハメになった地点で、既にかわいそうですね。

イルーゾォのスタンド「マン・イン・ザ・ミラー」の能力

イルーゾォのスタンド『マンミラ』の能力を一言で表現すると、鏡の世界の支配者となること。抽象的な表現ですが、まったくもってそうとしか表現できない能力なのです。

  • サイズを問わず鏡の中に潜伏できる(ただし鏡限定)
  • 標的を鏡の中に引きずり込むことができる
  • 標的を鏡の外に追い出すことができる
  • 『〇〇のみ』の出入りを許可できる(イルーゾォに許可されなかったモノは、スタンドだろうが肉体の一部だろうがウィルスだろうが出入り禁止)

つまり、スタンドを引きはがした生身の本体だけを鏡の世界に引き込み、無力なただの人間を『マンミラ』で一方的にボコることが可能なのです。スタンドはスタンドでしか攻撃できないの法則を考えると、この地点でかなりチート臭のある能力といえましょう。

ひとたび鏡の中の世界に引きずり込まれたら、時を止める絶対的チート『ザ・ワールド』のDIO様や『スタプラ』の承太郎ですら、ただの無力な吸血鬼と不良高校生に成り果ててしまうわけですが、彼らは生身の肉体のみでパワーのない『マンミラ』の攻撃を耐えきりイルーゾォ本体に突撃、そのまま素手の拳一つでオラオラ無駄無駄ウリィィしてイルーゾォを再起不能にできる気がしてなりません。

こんなしょうもない想像をさせてしまう『かわいそうさ』が、イルーゾォにはどことなく漂います。

イルーゾォのロジック構成力

ジョルノたちに先んじてポンペイ遺跡で待ち伏せしていたイルーゾォ。それ自体はリゾットの指示に従っただけなのかもしれませんが、現場で彼はなかなかに冴えた推理を展開してくれました。

  • 一番大事なのは、トリッシュの居場所(物事の優先順位が解っている)
  • 次に、ジョルノたち何故ポンペイに来たかも知っておく必要がある(全ての行動に意味があり、点と点を結んで線を引くことをわきまえている)
  • 何かを探しに来たと予想(勘が良い)
  • 『何か』とは娘を守るためのモノに違いない(冴えている)
  • 有名な犬の床絵のある所に何かあるのか?(天才か!?)

主人公補正の入ったジョルノにも引けを取らない鮮やかなロジックをドヤ顔で展開するイルーゾォに惚れ惚れします。

惚れ惚れするのに、ドヤり過ぎててぶん殴りってやりたい気持ちに人をさせるのが、彼のかわいそうな点でしょう。

イルーゾォの戦闘プラン

イルーゾォの戦闘プランを振り返ってみよう

まずはおもむろに鏡を設置

不自然でも無問題。否、むしろそれがいい!

人は不自然なモノが不自然な場所にあると、警戒しながらも近づき調べようとするものです。ポンペイ遺跡に大きな鏡が一枚だけかかっている――これは明らかに不自然なモノと場所の取り合わせであり、最初の犠牲者フーゴも奇妙な鏡に近づいてしまいました。

第三部の『バステト神』のマライアが仕掛けるコンセント型スタンドに通じる罠です。岩にくっついた奇妙なコンセントに触れたばかりに、エライ目にあったジョセフを思い出しました。

チラチラ映って人を誘う

鏡の中からわざとらしいほど姿を見せ、悠然と標的に近づきます。標的はフーゴがしたように、当然『鏡の外の世界』にイルーゾォの姿を探し求め混乱するでしょう。

標的を鏡におびき寄せ一気に引きずり込むべし!

マン・イン・ザ・ミラー
引用元:ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風BS11放送分より抜粋

奇妙な鏡が気になって近づいてきた相手を、『マンミラ』で鏡の中の世界に引きずり込みます。この際、スタンドなど不要なものが入ることは『許可しない』。

マンミラで生身の相手をフルボッコ

これがイルーゾォの基本的な戦闘プランです。彼もまたホルマジオと同様暗殺者であるため、正々堂々のフェアプレイなどには欠片も興味はなく、鏡の中の世界という超ホームグラウンドに標的を強制的に引きずり込み、一方的に嬲り殺します。

しかし、己の能力に絶大な自信を持つ一方で、イルーゾォの殺り方は慎重堅実でした。三人の敵を前にして、一人ずつ引きずり込み確実に始末する各個撃破を狙ったのです。

このことから察するに、イルーゾォは生身の喧嘩は苦手であるように思われます。もしうっかりジョルノたち三人を一度に鏡の世界に招き入れてしまったら、一人は『マンミラ』でボコれても残り二人に本体がやられてしまうと判断したのでしょう。

ギャングで暗殺者なのに、生身の喧嘩が苦手そうなのもかわいそうな点です。リゾットやホルマジオなど、素手の喧嘩でも普通の相手にはまず負ける気がしません。

ちなみにイルーゾォは、仕事のたびに大きな鏡を抱えて移動し、あえて不自然な場所に設置するという奇行を繰り返しているのでしょうか?

傍から見れば結構な奇行であるため職質されそうですね。ますますイルーゾォが不憫でかわいそうになってきました。

イルーゾォの覚悟と最後

『マンミラ』という初見殺しとも言うべきチートなスタンドを持つイルーゾォにとって、鏡の設置というお膳立てさえ整えば『仕事』はそう難しいことではなく、スタンドの性質上身の危険にさらされることも少なかったのかもしれません。

そんな彼にとって、フーゴを皮切りにアバッキオとジョルノを一度に相手取るポンペイでの戦いは、最初で最期のまさに死闘であったことでしょう。決してイルーゾォが弱かったわけではない、ただ、かわいそうなことにいかんせん相手が悪すぎました。

フーゴの無差別型最凶ウィルス兵器スタンド『パープル・ヘイズ』はあまりにも想定外・規格外であったことでしょう。

アバッキオはアバッキオで恵まれた体格と元警官という職種からか普通に生身の喧嘩が強く、イルーゾォは己の王国である鏡の中の世界で殴る蹴るの暴行を受け土を舐めました。

そして最悪だったのがジョルノです。鏡の世界という異常事態にありえない速度で対応し、『マンミラ』の能力を完璧に理解した上で逆に利用してくる15歳自らウィルス感染して鏡の世界にわざと引きずり込まれ、イルーゾォにウィルスを伝染させるという荒業をキメてくれたジョルノのおかげで、イルーゾォは自ら片手を失う覚悟で鏡の外に出ざるを得なくなります。

ジョジョの世界において登場人物が手足を失くすこと(一時的なものも含め)はさほど珍しくありませんが、イルーゾォの失くし方は凄絶の一言に尽きます。『ウィルスが外に出ることは許可しない!』とし、感染した腕を鏡の中の世界に残し本体だけが外に出たわけですが、その方法には激痛が伴いました。

そしてここまでして外に出たというのに、結局は待ち構えていた『パープル・ヘイズ』のウィルスに感染してしまい、ぐずぐずに溶け人の形をとどめぬ最期を迎えたイルーゾォ。ギャングというマトモでない生き方を選んだ地点でマトモな死に方は諦めるべきですが、死ぬほど痛い思いをしてウィルスを切り離した直後に再感染・溶解死はさすがにかわいそうになりました。

冷静に考えたら、ちょっとオツムがかわいそう…?

イルーゾォは決して知能は低くなく、ポンペイ遺跡で犬の床とトリッシュを関連付けるなど冴えた推理も披露しました。戦闘における判断力・行動力も暗チメンバーに恥じぬクオリティの持ち主あり、最後に見せた覚悟も見事というより他にありません。
しかし――彼と『マンミラ』について考察するうちに、あることに気付いてしまったのです。

イルーゾォは、鏡の中で標的と直接戦う必要が本当にあるのか?

彼は鏡の中に引きずり込んだ相手の前に余裕綽々で姿を見せ、限りなく一方的に『マンミラ』でボコり殺すわけですが……これ、本当に必要ですか?わざわざそんなことをしなくても、イルーゾォ本体を倒すか彼の『許可』を得るかしない限りは何物も鏡の外には出れないのです。

ならば、標的を鏡の中に引きずり込んだらさっさと自分だけ外に出て放置、一切の飲食物の出入りを『禁止』すれば標的は餓死するのではないでしょうか。陰湿で見栄えのしない殺り方ですが、そういったことを気にする集団でもないのだし、もっとも楽で確実な方法を選択すべきです。

絶対的支配者となれる鏡の国の王様を気取りたいばかりに、せっかくのリスク回避型スタンを満ちながら無駄に標的の前に姿を現しイキリ倒さずにはいられない。第三部で最弱のスタンド『ラバーズ』を操り承相手に調子に乗りまくった挙句、最後はボコボコにされたスティリー・ダンに通じる残念なかわいそうさがあります。

スタンドに見るイルーゾォの人格

スタンドの強さとは使い方と相対性であり、そこに絶対無敵はありません。
しかし、そうは言ってもやはりチート的に強い能力は存在し、そうした意味でイルーゾォの『マンミラ』はかなり強い部類に入るでしょう。

鏡の中の世界という絶対にバレない、あるいはバレたところでイルーゾォが『許可』しなければ入れない彼だけの王国。もし彼が逃げることだけに専心すれば、おそらく何人たりとも彼を傷つけることはできません。極論、核を落としても鏡の中の世界には何も変化は訪れないでしょう。

安全な自分だけの世界にこもり、自分の都合だけで対象を出し入れし、非力な生身の人間を一方的に『マンミラ』でぶちのめす。
そこはリスクという概念が欠落した、イルーゾォによるイルーゾォのためだけの世界です。

こんな能力を発現させるイルーゾォの性格はお世辞にも良いとはいえませんが、スタンド使いになる前の彼は、むしろ陰キャのいじめられっ子だったように感じられてなりません。自分にだけ都合の良い優しい世界に逃げ込みたいと強く願い続けた結果が、鏡の世界だったのではないでしょうか。彼の言動を見ていると、そんなかわいそうな妄想をしてしまいます。

けれども、このように考えると、敵味方問わず人を見下したイルーゾォの態度に合点がいきませんか?
あれは本物の余裕ではなく思春期引きずった青年の虚勢にすぎず、故にホルマジオも面と向かって『くだらねえスタンド』呼ばわりされても『言ってろ』と流したように見受けられました――『しかたねぇなぁ〜』と思いながら。

まとめ

人格にかなり難がありながら、それ故に人間臭いイルーゾォの魅力が伝わったでしょうか?一部ではヘタレ呼ばわりされているかわいそうなイルーゾォですが、それはあくまで比較対象となるホルマジオやプロシュートの兄貴が神レベルの覚悟を常に決め過ぎていただけで、イルーゾォだって頑張ったんです、彼なりに。

仲間にちょっとの意地悪を言ってみたり、アバッキオ相手に無駄に調子に乗って痛い目を見てみたりと、なんとも可愛らしい部分のあるかわいそうな暗殺者。それが鏡の国のイルーゾォさんです。

最後はイタリア人とは思えない完ぺきなフォームのイルーゾォ土下座を見てお別れしましょう。

イルーゾォ
引用元:ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風BS11放送分より抜粋