恋愛はきれいごとばかりではありません。
中には常軌を逸した狂気性を感じる歪んだ愛をテーマにした作品も多く、読んでいて爽快になるものはほとんどなく、でも読み終わった後に「こういう愛もあるのか」と教えられるものも多くあります。
今回はそんな歪んだ愛について描かれている漫画をいくつかご紹介。
狂気・悲劇・鬱・常軌を逸した歪んだ愛の結末
読んでいて恐ろしいく鬱な気分になる、そんな漫画をまとめてみました。
ホームルーム
引用元:Amazon
毎日のようにいじめを受けている女子高生の桜井幸子は、今日も椅子に接着剤を塗りたくられて授業で指されても立ち上がれず回答できない。犯人は不明。でも、そんなことではめげません。だって、クラスの担任の英語教師、愛田凛太郎がいつも気にかけて、助けてくれるから。2年前に母は男の人と失踪しちゃったけど、家庭訪問に来て、事情を知った愛田先生が私の分まで泣いてくれたから笑顔になれた。バイト先でも怖い男の子に絡まれるけど、大丈夫。先生がいるから。
今日も先生に勧められたカモミールティーを飲んで眠る、寝る時は唯一現実から逃避できる時間。大丈夫、独りじゃない。そう、独りじゃないのです、ベッドの下の隙間には全裸になって幸子の眠りを待つ、優しいヒーロー、愛田先生がいるのです。更に幸子は教師の愛田に惚れているのですが、実はイジメの首謀者はその愛田でした。
愛田は自分が幸子のヒーローになりたいため、辛い時や困ったときに必ず現れる正義の味方でありたいがために、幸子が不幸である必要があるという歪んだ愛を持っていて、愛田には幼少期の辛くて重い過去をもっているのですが、それが人をここまで狂気的な性格に歪ませてしまう恐ろしさを感じます。
そして、狂気的なのは愛田だけかと思いきや、幸子を取り巻く周りの人物たちもサイコパスばかりとういう思いがけない展開へと続き、読み進めていく中で重く辛いシーンや鬱性を感じられる内容ですが、次の展開が気になって狂気を感じるものの読み進める手が止まらない作品です。
千代/講談社・コミックDAYS
全8巻・完結済み
ハッピーシュガーライフ
引用元:Amazon
一見普通に見える女子高生・松阪さとうはどこか心の壊れた子で、誘われるまま男について行くき、その男たちをとっかえひっかえしてみるがそれでも本当の愛というものが分からなかった。そんなある日運命的な出会いをする。この人こそ私の運命の人、本当の愛を教えてくれる相手だとさとうは信じる。この道端でさらってきた少女・神戸しおちゃんこそが。
愛の分からないさとうは普通に見えても行動理念も思考も異常で、目的のためには誰かを害するなんてどうでもいい、壊れた女子高生です。そんなさとうは純粋無垢なしおちゃんとの日々を本当に大事にしていて、しおもさとうを好いて幸せな日々を過ごしますが、明らかにに歪み、どこか壊れた愛の物語ですが本人たちは本当に幸せそうで、お互いの欠けて病んだ心を埋めていくように相手を求めるさまは美しくすらあります。
さとう以外の登場人物もほとんどが病んでいて、病みながらもまっすぐに自分の幸せを求めている。本当の愛ってなんなのか?幸せの形とは?と考えさせられる作品です。
作者:鍵空とみやき/スクウェア・エニックス
全10巻・完結済み
未来日記
引用元:Amazon
中学生で日記が趣味の天野雪輝が主人公。雪輝は周囲と関わるのを避けていて、友人は空想上の時空王「デウス・エクス・マキナ」と彼の家来の「ムルムル」だけです。ある日自分の日記に未来が書き込まれていることに気がつきます。興味を持って読み進んでいくと自分の死が書き込まれていました。雪輝は同じように未来のわかる日記「未来日記」を持つ12人の人々と次の時空王を決める殺し合いのゲームに参加することになり、その中にはクラスメイトの我妻由乃もいました。
彼女は雪輝のストーカーで、雪輝のことを心から愛していますがそれは歪んだ愛情です。由乃の日記は「雪輝日記」。雪輝の未来を10分おきに記録する能力で、体能力も高く雪輝のためなら平気で人を殺すほど。
一巻を読んだ時最初は鬱展開だと思ったのですが、読み進めていくうちにハマってしまいます。由乃の狂気的な愛情にも慣れ、可愛いと思いますし、歪んでいるとはいえここまで人を愛せるのだなとある意味感心しました。しかし残酷な描写もあるので、苦手な人も多いかもしれません。1人しか生き残れないサバイバルゲームで由乃の狂った愛情はどうなっていくのかに注目してほしいです。
作者:えすのサカエ/KADOKAWA
全13巻・完結済み
間宮さんといっしょ
引用元:Amazon
主人公の佐々良は「自分の為に死んでくれる人」が好きな人という歪んだ考えを持つ女の子。告白した男性にそれを告げると「電波かよ」と引き下がってしまう。そんな矢先、先輩の間宮さんに告白され佐々良は同じ事を告げる。間宮さんは「わかった」と言って立ち去った。次の日、謝ろうと思っていた佐々良は間宮さんが失踪した事を友人から教えられるのだが、佐々良の前には間宮さんが微笑んでいた。
なんと、間宮さんは死んで幽霊として佐々良の前に現れたのだ。自分が殺してしまったようなものだと涙を流す佐々良に対し、間宮さんは大したことじゃないと笑ってる。私の事をどう?と問いかけると「大好きです」と笑う佐々良がいた。それから、2人は一緒に行動することになる。
この作品は鬱な展開かと思いきや、佐々良や間宮さん、後に現れるキャラクターも一筋縄ではいかず、狂気をはらんだ思考を持っているのに、ストーリーは軽快に進んでいくので独特です。間宮さんが佐々良に対する思いや、佐々良の隠れた本性は、読者が理解しにくいかもしれないが、逆にそれが癖になり、どんどん読み込んでしまう。そんな作品です。
作者:ガオシ/小学館
全3巻・完結済み
トラップ~危険な元カレ~
引用元:Amazon
主人公の菜穂は社内での先輩である八島と婚約関係を結ぶことになり順風満帆な日々を送っていたものの、ある日突然女の裸体の写真が送信されてきた。そのことに酷く脅えていたのだが、実は菜穂にはその写真の心当たりがあり、その理由は元彼である氷目崎が菜穂に対し首輪をつけそれを撮影し楽しむなど、歪んだ愛し方をされ狂気に満ちていたことを思い出したからだ。
菜穂にとって思い出したくもない過去を、婚約のタイミングで再確認することになってしまったために鬱な気持ちになっていた。すると後に氷目崎が菜穂の会社に異動してきて、幸せから一転再び狂気に晒されることとなる。この漫画を読み面白いと感じたのは、氷目崎がナイスタイミングで菜穂のことを翻弄し、結婚を留まらせようとしているところ。八島とその両親との会食の際にも突然下着姿の写真を送ってほしいなどとメールを送ってくるのは菜穂にとって恐怖でしかないと思うが、そのような狂気じみた恋愛がこの漫画の肝となる部分でもあり、面白さを感じた。
ruu/講談社
最新20話・連載中~
異常者の愛
引用元:Amazon
主人公の一之瀬一弥が小学生の頃、クラスで上手く輪に入れないでいる女の子に優しく接してあげた事があった。それをきっかけに、その女の子は主人公の事が好きになってしまうが、主人公には別に好きな子か居たため、女の子はその子が消えてしまえば、自分を好きになってもらえると思い、一弥の初恋の相手を同級生の三堂三姫に殺される。
当然三堂は少年院に行くことになったのだが、一之瀬一弥はこの事件に対し、ショックを受けてしまう。時が経ち、一弥が大学生になった頃、再び三堂が目の前に現れ、一弥に繋がりのある女性を次々に拷問等行い、一弥に近付かないようにしていく。主人公は女の説得を試みるが、三堂は一弥が照れていると勘違いし、エスカレートしていく。
読んでみた感想としては、ただただ胸くそ悪かったです。彼女の餌食になっていく女性達が不憫でなりませんし、身も心も全てをズタボロに壊していき、痛々しい表現も多くあり読んでいて正直気持ちのいいものではありませんが、それでもその後の展開がどうしても気になり最後まで読み続けてしまいます。ただ結末を読んで、こういう愛し方しか出来ない人ももしかしたら居るのかもしれないと感じたものの、歪んだ愛の恐ろしさの方が強く残りました。
作者:千田大輔/講談社
全6巻・完結済み
きみが心に棲みついた
引用元:Amazon
下着メーカーに勤める主人公・小川今日子は、子供の頃から自己評価が極端に低く、慌てると吃音になる癖があり、そのため、周りからキョドコというあだ名をつけられ母親からも疎まれていて、そんな今日子の心の支えになったのは、大学時代の先輩・星名蓮でした。彼は今日子に「そのままでいい」と言い、初めてありのままを受け入れてくれたため、今日子は彼の優しさに依存するようになりますが、星名は今日子の気持ちを受け入れることはなく、気分次第でDVや暴言を吐くサイコパスだったのです。
今日子は何とか彼から逃れますが、ある日突然、星名が今日子の会社の上司として現れるのです。激しく動揺する今日子は、また星名に振り回されますが、合コンで出会った編集者の吉崎幸次郎に惹かれるようになり、彼に何度もピンチを救われます。今日子が離れていくことに苛立ちを感じる星名は、さらに執拗に彼女に苦痛を与えようともがくのでした。
この作品のポイントは、星名の異常性と、それに応えてしまう今日子の間にある共依存の恐ろしさです。星名から離れたいのに離れられない今日子をみているとイラッとしてしまいますが、星名の気まぐれの優しさを心の糧にしているところは、初恋の人を忘れられない気持ちに似ている気がします。星名は今日子を傷つけることでしか繋ぎ止める手段がないののですが、軽くあしらいつつも、今日子に執着しているのは彼の方だと感じました。
彼も親に虐待されていた過去があるし、彼女に共感して優しくしていたところは本心だと思います。でも、それを恋愛感情まで引き上げることができなかったのが、サイコパスの厄介なところかなと思いました。恋愛ものなのに、お互いに本人同意のストーカーみたいになっているところが、かなり斬新です。
作者:天堂きりん/講談社
全9巻・完結済み
血の轍
引用元:Amazon
静一と彼の母である静子を中心に歪んだ狂気の親子愛がのどかな田舎を舞台に描写されています。静子の親族との関係や周囲の環境に対する鬱屈を原因として共依存に陥り機能不全になっていく関係が描かれており、もっとも大きく親子の関係が変質してしまうきっかけは、親戚との山登りで静一の従兄弟であるシゲルが静子に崖から突き落とされる場面にありますが、警察から事情聴取を受けた際に静子を庇って事件の真相を隠したところから次第に罪の意識に苛まれるように。
主人公の静一は同じクラスの生徒の吹石のことが気になっていますが、吹石は自身の父親から暴力を受けるなどして家庭に居場所がない現状にあり、静一はその思いに寄り添い、次第に吹石の傍にいるようになりますが、それを静子に見咎められ関係性を悪化させてしまい、最新刊では静一が友達にトイレで髪型を水でいじってからかわれたことで、これまで保っていた心の均衡が崩れて執拗に暴力を振るってしまうなど、徐々に静一の生活をむしばんでいくのです。
母親の歪んだ愛さえなければ日常を描いた普通の作品なのですが、愛に狂気ともいえる執着があるだけで単なる親子愛が身の毛もよだつ作品になるのがこの作品の魅力だと思います。
押見修三/小学館
最新8巻・連載中~
圧勝
引用元:Amazon
主人公、篠山誠が進学先の大学で出会った不思議な女性…吉田さん。彼女と関わり、親しくなっていくうちに、不穏な出来事に巻き込まれることに。登場人物それぞれが物語をもっていますが、みんな何処か歪んでいて、それにあてられたかのように主人公もだんだんと歪んでいきます。
美人で不思議な吉田さんは一番純粋な素振りですが、台詞や行動のはしばしに狂気を滲ませており、彼女が持つ秘密が周囲をどんどん狂わせていく展開が恐ろしく、登場人物たちの抱える歪んだ愛や苦悩が浮き彫りになっていくストーリーに引き込まれました。
連載中なので現在ストーリーが盛り上がってきていますが、鬱展開と流血描写、性に纏わる描写がキーとなってくるので、苦手な人は注意です。愛とか、友達とか、恋愛とか、そういう事象のナゼ、ナニを悶々と突き詰めながら、少し超常的な事件に振り回されていく人たち。可哀想で、簡単に折れていったりする。その中で主人公が強くなっていきますが、正しさとは強さとは何なのかを常に考えさせられます。
小虎/小学舘
最新12巻 連載中~
にいちゃん
引用元:Amazon
BL漫画界の鬼才・はらだが描く偏愛の物語。小学生の頃、同じマンションに住む、にいちゃん、によく遊んでもらっていた主人公の、ゆい。ある日、いつものように遊びに行くと「いいこと教えてあげる」と襲われそうになり、怖くなったゆいは、にいちゃんの部屋を飛び出してしまう。それからにいちゃんと顔を合わせることの無いまま引っ越してしまい、ゆいは高校生になる。ゆいはあの日のにいちゃんが忘れられず街を彷徨い、偶然にも再会するのだが、ゆいに逃げられたことを「裏切り」と捉え歪んだにいちゃんに「絶対に自分から逃げない・裏切らない」ことを約束させられてしまう。
にいちゃんの狂気に飲み込まれながら、ゆいはにいちゃんの過去を知り、2人でのこれからを模索しようとする。少年愛の複雑さ、正しい愛とはを考えさせられる話で、全ページ通して2人の苦しい心情をはらだ先生の繊細な絵によって丁寧に描写されています。ラストも鬱展開で完全なハッピーエンドとは言えませんが、自分達の問題と世間に向き合い、成長していく2人がどのような生き方を選ぶのか、読み応えのある1冊です。
作者:はらだ/プランタン出版
全1巻・完結済み
マイ・ブロークン・マリコ
引用元:Amazon
自殺した親友・マリコの遺骨を持ってガラの悪いOLシイノが、マリコの行きたがっていた「まりがおか岬」まで旅をするお話です。
シイノは、道中マリコのことを思い出し、彼女のことを大切に思っていた部分と、何度も嫌な女だと感じたことを思い出します。
どことなく狂気に満ちて、勢いでマリコの遺骨を、彼女を虐待していた父から奪って逃避行する姿は清々しいのにどこか鬱々とした美しさがあって素敵です。
あらすじを書くには簡単なストーリーですが、シイノとマリコの歪んだ友人関係が、とても深みのあるストーリーを演出。虐待を受けていたために歪んだ人間関係しか築けないマリコは、一見すると彼女だけが狂っているようですが、おそらくシイノも狂っていて、マリコへの執着がもはや狂気です。
恋愛とは違うのだろうけど限りなく恋愛に近い愛で結ばれた、魂の友人であるシイノとマリコ。好き嫌いが分かれる作品だと思いますが、余韻を残す終わり方も素晴らしい。
作者:平庫ワカ/KADOKAWA
全1巻・完結済み
緑の黒髪
引用元:Amazon
いづみと悟郎は高校二年生。二人は小学生の時に両親が再婚してなった義姉弟の関係で、同じ学校内でも普通の血の繋がった兄弟のような憎まれ口や軽い小突き合いをしながらも、辞書を貸してあげるような自然に仲の良い関係であった。家族として良い関係を保っている二人ですが、その裏では実はお互いの心の中に触れてはいけないような漠然とした不安が。二人がお互いを意識してぎこちなくなるたびにいづみは髪を男の子のようなベリーショートにして、そうしてバランスを取ってきたのだが、そのバランスも二人の成長とともに保て切れずに崩れだした。
小学生の時は黒くて綺麗で長い髪をしていたいづみでしたが、髪は二人の間で「女性の性の象徴」として歪に紡ぎます。この作者独特の雰囲気があり、シンプルなハッキリとした線の絵柄でアッサリとしているのに繊細な心情の展開が丁寧すぎるほど描かれ、しかしその心の声を決してハッキリとは描かれておらず、終始心がざわつく感じなのに、切ないや儚い、美しいなど言葉にできない気持ちになりました。エッチな描写はキスひとつもないのに、いけないことをしているような気持ちがちゃんと伝わります。先に進むのが恐いとか甘く痺れて、10代の痛々しい感情が光っていて、上手く言えない歪で独特なこの雰囲気は漫画を読まないと分からないので、是非読んでほしい隠れた名作です。
作者:望月花梨/白泉社
1巻・完結済み
まとめ
とても正気とは思えない歪んだ愛。それでも人を愛することに違いはなく、歪み切っているとはいえそれも愛の表現の一つなのかもしれません。
そういった作品はハッピーエンドで終わるものは少なく、読み終わって鬱な気分になるものもありますが、このような作品を読まないと分からないことも多くあります。
人とは違った歪んだ愛、ぜひ読んでみてください。